半日体験ダイビング 2011年5月25日


 今回の屋久島旅行は3泊4日の日程。最終日は昼にフェリーに乗るので、その日の午前中はやる事がなく無計画。何かすることはないかと、到着した日にキャンプ場で無料の観光ガイドを眺めていた。

 そこで目に飛び込んできたのが半日体験ダイビング。昔オーストラリアのケアンズでスカイダイビングは経験したことがあるが、海のダイビングはまだ未経験。
 料金も1万円位とそれ程高くないし、半日なので時間が合えばフェリーに乗るまでの午前中にできる。やるならこれしかないと、早速一軒に電話をしてみた。

 半日体験は午前と午後があり、午前は大体9〜12時くらいまで。帰りのフェリーは13時半なので、まさにもってこい。その日の予約も申し込めたので、望み通りに事が運んだ。
 早くも海に潜った気分に浸っていると、電話の向こうの兄さんから「ウェットスーツのサイズを知りたいので、身長、体重、足のサイズを教えてください」と言われた。サイズを答えると、何とそのサイズがないとの答えが。

 ないってのはどういうことだ。私は身長170cmで体重は90kmとがっちり体系だが、そんなに大男ではない。なぜそんなサイズがないんだと言葉を詰まらせてると、兄さんは追い討ちをかけるように話を続けた。「他のショップに聞いても、その体に合うサイズはどこもないですよ」と。

 その言葉が意味するのは、私は屋久島でダイビングが出来ないということだ。海に潜らなくても、気分は深く沈んでいった。
 ここ数年のに暴飲暴食と運動不足で体重が15km増えたのが原因だ。昔の体系なら絶対にサイズはあったはずだ。
 太ると動くのは億劫になるし、足腰への負担も増す。そして、ダイビングも出来なくなる。碌な事がひとつもありゃしない。この時に私は真剣に減量しようと心に決めた。

 敗北感を消すため三岳を何杯も飲んでいたが、どうしてもダイビングがしたい。まだ諦めるのは早いだろうと、駄目元でかたっぱしのショップに電話をしていった。
 だが、5軒に問い合わせてみたが、兄さんの言う通りどの店も大きいサイズのスーツはなかった。

 次も駄目だろうと期待なく聞いてみると、なんと意外にも「あります」との返事が。その言葉は深海に沈んでいた私の前に人魚が現れて、竜宮城へ誘ってくれるかのようだった。
 かくして、メタボ気味の私も晴れて体験ダイビングが出来る運びとなった。そんな幸運をもたらしてくれたのは、安房にある屋久島ガイドクラブだった。

 当日迎えに来たインストラクターは、話し上手で気さくな人だった。客は私一人なので、今日は満タンのボンベが空になるまで潜れるという。
 ダイビング・スポットは島北部の一奏。この日は雨だったが海の中は関係ない。台風の影響で若干海は荒れていたが、島にはスポットがいくつもあり、台風でもあまり影響がない場所がどっかしらにあるという。今回は一奏がその場所だったのだろう。

 簡単な講義を受けて装備を着用し、いよいよ海の中へ潜水開始。ふんわりと浮いたような無重力感覚はまさに小宇宙だ。
 周囲にはあらゆる魚が泳いでおり、岩には貝や何だか分からないものがあちこちに付着している。すっかり興奮し、貸してくれた水中カメラでバシバシと写真を撮った。

 耳抜きはすぐ慣れたのだが、浮き沈みが難しかった。ダイビングは呼吸をすると肺が膨らんで浮き、息を吐くと沈む。だが、「呼吸を常にしなければ死ぬ」という観念が頭から離れず、どうも上手くいかない。インストラクターが私の上着の空気を操作し、浮き沈みのを対処を何度もしてくれた。

 時計がなかったのではっきりとは分からないが、潜水時間は大体1時間位。深いところで5、6mまで潜った。屋久島では水深20m付近に米軍の戦闘機が沈んでるらしい。
 インストラクターの人はどっかの海で水深60mまで潜ったという。そこまでいくと水圧で貧血のような状態になり、視界は目の幅くらい狭いものになるそうだ。

 私にとって初ダイビングは視野の広がるもので、海という新しい冒険のフィールドを発見した。そもそも地球の7割は海。そこを探検せずにはもったいない。
 広い海の中であらゆる生物を目にして、生命の源が海であるという事も強く実感できた。この先いつか、大海原を航海する旅がしてみたとも思った。




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