島一周ドライビング・前編 2011年5月24日


 当初の計画では、この日はレンタルサイクルで島を一周する予定だったが、昨晩から天候が急変して今日は一日雨。ラジオの天気予報を聞けば、九州地方は例年より8日早く梅雨入りしたと告げている。
 天気が回復する見込みはないし、こんな状況でサイクリングはつまらない。そこで、計画を変更してレンタカーで島一周をドライビングすることにした。

 宮之浦港付近へレンタカーを借りに行こうと歩き出すと、キャンプ場の入口の横にレンタカー店があった。だが、ここは料金が若干高かったので諦めて港へと進むと、さらにすぐ近くにスズキレンタカーを発見。料金も安かったので10時間のレンタルで軽自動車を借りた。

 店の兄ちゃんは取り締まりについて色々と話してくれた。屋久島の警察は暇なので、スピード違反や携帯電話使用の取り締まりをしょっちょうやっているらしい。
 それが行われる場所は、アクセルを踏まずとも加速する坂道の下が多いようだ。同じ場所で3日続けてやる事もあるらしく、島の者でも意表を衝かれるのだという。

 そんな話を聞いたので、シートベルトをしっかりと締め、時速50kmのペースで時計回りにスタート。屋久島一周は約100kmなので、そもそもゆっくり走っても1日で十分見て回れる。

 まずは安房港付近にある本坊酒造を訪れた。ここで島限定発売の「太古 屋久の島」を購入。後日に飲んだがまあまあの味だ。個人的にはやはり定番の「三岳」の方が美味い。
 その三岳酒造はこの先にあったが、こちらは店頭販売はしていなかった。まあこっちはスーパーに行けば買えるので問題はない。

 その後10km程走ってトローキの滝に到着。これはあまり迫力がなくイマイチだった。しかも滝入口の看板が木で見えなく、一度は通り過ぎてしまった。場所を尋ねたのが入口の向かいにあった「ぽん・たん館」。車はそこに駐車すれば歩いて見に行ける距離だ。

 見応えがあったのは次に訪れた千尋滝(せんぴろたき)。ここは宮崎駿の「千と千尋の神隠し」の名前の元になった滝だ。見た目はまるで天然のダム。巨大な花崗岩の一枚岩との組み合わせは日本最大級だという。

 ここで初めて知ったのが、屋久島には「げじべえ」という妖怪がいること。これは、大木や老木に棲みついていると言われる山の精だ。奄美大島の「ケンムン」や、沖縄の「キジムナー」と同類のものだろう。

 それと「ごちょう踊り」という郷土芸能もあった。これは神社への奉納の踊りで、太鼓や鐘を鳴らしながら踊るらしい。千尋滝の近くの原集落では毎年1月7日に行われ、踊りの他に「鬼火焚き」という一年の無事を祈る行事もやるという。

 尾之間へ下った後にそのまま走り、恋泊にある陶芸の工房に立ち寄った。ここは自宅と隣り合わせの工房で、店の名前も恋泊。全て奥さんが一人で作っている。
 観光パンフレットで「屋久島焼」という文字を見かけたのでそういう陶器があるのかと思ったが、本来は屋久島焼というものはないという。だが、屋久島で作っているので、そういう風に呼んでもいいのだろうと奥さんは話していた。

 島生まれの奥さんから、地元についても色々と聞くことができた。屋久島は川ごとに集落が分かれており、それぞれ方言も違うのだという。同様に山の神への踊りや歌も集落ごとに違うらしい。

 それと「岳参り」という山岳信仰もあり、これも集落ごとに崇拝する山(岳)が違う。お参りには穢れのない青年2〜4人が代表として選ばれ、浜の白砂やお神酒、集落の人達の賽銭を預かって山に登るという。岳参りは今もまだ残る信仰だが、現在は行ってない集落が多いようだ。

 山の神は女なので、女が山に入ると神が嫉妬するから山に登るなと、奥さんが小さい頃は年配者から言われたそうだ。日本一の富士山にもかつては富士信仰があり、その頃は女人禁制でやはり女は登れなかったはずだ。

 山岳信仰の他に屋久島にはエビス信仰があるようで、島の至る所に魚を抱いたエビス像が祀られていた。海に囲まれた島ならではの民間信仰だろう。屋久島に限らずエビス信仰の盛んな島は他にもあるようだ。 (後編へ続く)




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