縄文杉トレッキング・後編 2011年5月23日


 大株歩道入口からはいきなり急斜面で、かなり息があがる登り。所々には木で作られた階段が設けられていた。そんな道を30分登りウィルソン株に到着。これは大きな切株で中に入る事ができる。

 外人みたいな名前の理由は、アメリカの植物学者ウィルソン博士がこの木を調査したからだ。また、この木が切られた理由は豊臣秀吉の命令によるもので、それは大坂城築城という運命を背負った為だという。

 中で記念撮影をしていたおばちゃん達の話によると、切株の中から上を見上げると切口がハート形に見えるらしい。実際見てみたがどこがハートなのかよく分からなかった。そういう事を気にするなんて、女性はいくつになってもやはり女だ。

 ウィルソン株を通過後、大王杉、夫婦杉という巨杉を眺めながら急斜面をあがること1時間、遂に目的の縄文杉に到着。スタートから約5時間と、思ったよりも早く来れた。

 道中の杉も大きかったが、やはりこの縄文杉は存在感がある。発見されたのは昭和41年とそんなに昔ではないようだ。
 樹高は25,3mで、胸高周囲は16,4m(直径5,1m)とかなりデカイ。その大きな幅と同じく、樹齢が推定2千年から7千年とこちらもかなり大きな幅がある。

 後日に島の人に聞いた話だが、昔はこの縄文杉は手で触れたらしい。しかし、現在はそれは無理で、根元も踏まれて痛まぬようテラスの展望台になっている。観光客の数が増えれば増えるほど、状況は自然とは遠のくのだろう。
 この縄文杉よりもデカイ木が、山の中にはまだ何本もあるらしい。一部の爺さんたちはそれを知ってるが、誰にも教えず墓場まで持っていくとも話していた。

 昼飯に30分休憩して下山を開始。思った以上に縄文杉には早く着いたので、心配していた荒川口の最終バスには余裕で間に合う。
 個人差はあるだろうが、この位のペースで登れるなら白谷雲水峡からスタートしなくても、荒川口を6時スタートで登り始めても白谷雲水峡の16時の最終のバスに間に合うだろう。そっちの方が白谷で景色も存分に見れるに違いない。

 まだ早い時間に下山を開始したので、後から登ってくる団体客などが多かった。木で作られた階段が一人しか歩けないので団体が登ってくると、その間待つことが多くなるのが面倒だった。

 大株歩道入口まで戻ってくれば、後はひたすらトロッコ道を降りていくだけ。ここは廃線なのかと思っていたが、下山中に電車が上がって来て驚いた。これが動いているのは、便所の汚水を運んでいる為だった。

「屋久島は一年に365日雨が降る」と言われているほど雨が多い場所。降り注いだ雨は山から谷を駆け下り、川となり海に注ぎ込む。そして再び空に舞い上がってまた雨がふるという循環が繰り返される。屋久島の生命は、多量に降る雨水がもたらしているようだ。

 この日の天気予報も大雨だったが、幸いトレッキング中は霧雨で雨具は必要なかった。しかし、荒川口まで後30分という地点で天候は予報通りの大雨に。合羽を着込んでの下山になったが、トロッコ道なので雨が降ろうが歩きにくくはない。
 傘を差しながら歩いてる人もいた位だ。これが縄文杉の周辺だったら滑ったりと危険が多かっただろう。

 ゴールの荒川口には13時40分に到着。下山は約3時間半。スタートからの合計時間は8時間半だった。
 荒川口から屋久杉自然館までのバスはすぐ乗れたが、その後のアクセスが非常に悪く、屋久杉自然館では安房行きのバスを1時間待つ羽目に。

 最終のバスならば待ち時間がなくスムーズに帰れるようだ。そんな事をトレッキング中に何度か一緒になった人と帰りのバスの中で聞いた。
 その為、自然館で降りた客の大半は、タクシーを相乗りをして安房へ戻っていった。私は特に急いでないので、バス停で飯を食いながら気長に安房行きを待つことに。バスで話した人は自然館に併設している食堂を飯を食っていた。

 彼は食事後に戻ってくると、バスを待たずに空港までタクシーで行くと話してきた。理由は次に来るバスは安房止まりで、宮之浦方面のバスは安房でさらに30分待たなければならないからだという。さっき飯を済ませたばかりの私の腸の便はいいのに、何て便が悪い帰路だ。

 だが、トイレに行かなかったので運が残っていた。彼がいい人で無料で空港までタクシーに便乗させてくれたのだ。空港から乗るバスは結局は安房で待つものと同じ便だったのだが、待ち時間を空港ロビーで過ごせたので雨風を安易に凌げた。

 荒川口に下山したのは14時前だったのに、宮之浦のキャンプ場に戻ったのは17時と、縄文杉からの下山と同じ位の時間が掛かった。
 疲れた体を癒してくれるのは、我が友の焼酎三岳だけ。テントで横になると20時前だというのに、こちらは時間が掛からず速攻で眠りに就けた。




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