縄文杉トレッキング・前編 2011年5月23日


 トレッキング開始予定は朝5時。宮之浦のキャンプ場から白谷雲水峡までは車で30分なので、前日にタクシー会社に電話して4時半に迎えに来てもらう予約をした。早朝は別料金が掛かるらしく、運賃は3千円くらいだった。

 タクシーの運ちゃんはよく喋る人で、登山についていろいろ話してくれた。私が歩むルートの説明をすると、遅くとも11時には縄文杉に到着して11時半には下山しないと最終のバスには間に合わないという。
 しかも、今日の天気予報では大雨らしいので、トラブルなどの計算を入れるとギリギリだと心配してる。だが、私は歩くのが早いほうなので何とかなるだろう。

 万が一間に合わなければヒッチハイクを考えていたが、荒川登山口は一般車の乗り入れが禁止になったのでそれは無理らしい。料金を前払いして迎えの予約を入れる方法もあるよと、しっかり営業されたが大丈夫だと断った。

 白谷雲水峡の登山口には小屋があり、そこでガイドを連れた若い女二人が朝飯を食べていた。それ以外に人はいなく辺りはまだ真っ暗。この時の為にと買った安物のヘッドライトは、昨夜1時間も使わない内に故障したので、ハンドライトで足元を照らしながらトレッキングを開始した。

 タクシーの運ちゃんの話では日の出は5時半なので、30分歩けばライトはもう必要ないだろう。このルートはさつき吊橋で分岐する。右方向に進めば原生林を歩けるのだが、こちらを進むと時間が掛かるので分岐を左方向へ進む。

 数ヶ所の沢を渡り、30分でくぐり杉という穴のあいた杉に到着。その先にあった白谷小屋でちょうどスタートする人に出会った。この人は山を縦走しており、昨晩はこの小屋に泊まったようだ。

 道中では野生の鹿に何度か出くわした。人間になれてるのか近づいてもあまり逃げない。そんな鹿に会いながらしばらく歩くと、目的のひとつだったもののけ姫の森と名付けられた苔むす森のエリアに入った。

 ここは想像通りの森で雰囲気抜群。どこからか木霊(こだま)がコリコリ音を鳴らしながら現れそうである。早朝で誰も人がいないという事も相乗効果になっていた。驚くのは苔むした岩の上で枝木が根付いてることだ。植物の生命力は逞しすぎる。

 さらに30分歩いて太鼓岩の登り口に到着。ここで朝飯を済ませた。朝食は持参した食パンにツナを乗せてマヨネーズをかけるだけの簡単なもの。水筒は2リットルのペットボトルで、それに粉末のスポーツドリンクを混ぜたものだ。何でも簡素なもが一番。

 登山というと分厚い靴やステッキ、女子高生のルーズソックスみたいなものアイテムがあるが、私の場合はジャージとスニーカーという、近所のスーパーに行くのと変わらない極めてシンプルなもの。普段から動きやすい格好が一番だ。

 底の厚い登山靴など歩きにくくてしょうがないし、ステッキなど邪魔なだけだ。東北で有名な狩人のまたぎは足袋を履いて山を歩く。それは、足の裏で地面を感じれた方が疲れないからだという。これにはまったく同感である。

 太鼓岩への登りは15分程だが、かなりの急斜面。登るのは一苦労だが、岩の上からの大パノラマは絶景。この景色だけでも見に来る価値がある。
 後で知ったのだが、この太鼓岩は叩くと太鼓のような音が鳴る事からその名が付けられていた。

 その後、荒川登山口コースとの合流地点の楠川分れに到着。スタートからここまで約2時間、いいペースで来た。今までは自然の山道を歩いてきたが、この合流地点からはトロッコ道になり登山者の姿が急激に増えた。

 やはり荒川登山口からのスタートが定番なのだろう。白谷雲水峡で見かけたのはスタート地点の3人と途中で1人、あとは鹿が2匹だけだった。
 楠川分れからはトロッコ道の線路の上を1時間ひたすら歩き、8時に大株歩道入口に到着。トロッコ道はここまでで、ここからが本格的な登山道になる。 (後編へ続く)




Copyright (C) 2019 諸行無常 All Rights Reserved