3日目 岩手(前編) 2018年4月30日


 冬用の寝袋を忘れたので夏用を使ってる為か、明け方に寒さで目が覚めた。ここ遠野は盆地だし、なんといっても東北。GW中は全国的に天気も良く気温も高いが、やはり北国を舐めてはいけない。

 昔から来てみたかった遠野は、柳田国男「遠野物語」の舞台となった町で、河童や座敷童などが登場する「遠野民話」もあり、民話の故郷と呼称される町。
 座敷童に会える宿があるのも有名で、その部屋の予約は数年先まで埋まってるという。そこに泊まった後に幸運に恵まれた著名人も多いようだ。

 遠野観光でまず向かったのは南部曲がり家千葉家。曲がり家とは住居と馬屋をL字型に連結した作りの家。訪れてみたが保存修理工事中で見れず、私もへそを曲げて次へ向かった。

 そのすぐ近くにあった続石は、山を15分程上った松林の中にある重なった巨石のオブジェ。自然の産物なのだろうがその偶然は、回り将棋で駒を振った時に逆さに立つくらいの奇跡だ。この続石は古代人の墓だとか弁慶が持ち上げたなどの伝説もあるらしい。

 次に向かったのは、縁結びや恋愛成就のパワースポット卯子酉神社。境内で売られている赤い布を、左手だけで結ぶ事が出来ると願いが叶う、という言い伝えがある。
 布を見てみると「誰々と結婚できますように」とか、「誰々と結ばれますように」などの願いが書かれていた。私も布を買って結び、「痔の傷が早く結ばれますように」と願っといた。

 ここから少し歩いて五百羅漢へ。山中の岩にいくつもの羅漢像が刻まれ、それがまた苔むしていて一層雰囲気があった。像が彫られたのは江戸時代、この地を襲った飢饉の犠牲者を供養するためだという。

 次なる地は遠野ならではと言えるかっぱ淵。かつてこの辺りに河童が多く住み、人を驚かせたという伝説が残る場所。常堅寺の裏手を流れる小川には、小さな河童の像が2体あってその中心に祠があった。

 小川には釣り竿が掛けられ、川面の紐の先にはキュウリが浮かんでいた。なんと、許可を得ればここで河童釣りが出来るらしい。
 だが、小川は透明度抜群でおまけに浅い。釣りをしなくても河童が現れたら、飛び込んで手掴み出来そうな気がした。

 その後、山口の水車を見てデンデラ野へ。ここはかつて姥捨ての風習があった土地で、終の棲家という藁作りの小屋が再現されていた。
 昔は60才になった老人は、里から離れたこの小屋で暮らしていた。日中は里に下りて農作業を手伝い、僅かな食料を貰って小屋る。そして寄り添うように暮らしながら、命の果てるのを待ったという。(後編へ続く)


[この日の写真]




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