幸福の夜明け (スコータイ) 2003年7月29日〜31日


 チェンマイからバスに5時間揺られスコータイに到着。幸福の夜明けという意味を持つスコータイは、13世紀に半ばにタイ族によって始めて成立した王朝があった場所。
 世界遺産に登録されたスコータイ歴史公園には当時の遺跡が残り、確認されているものだけで200ヶ所以上あるという。

 スコータイで選んだ宿は「No.4 GuestHouse」。宿は町はずれにあるので徒歩では幾分不便な場所だったが、畑の真ん中にある隠れ家的な宿というロケーションで、静かに過ごせる所だった。
 造りは竹製のバンガローで、それぞれの部屋の前にはスペースがあり、そこには竹製のテーブルとカウチもあった。

 英語が流暢なオーナーのおばちゃんもフレンドリーで、居心地も抜群。料金も180バーツとリーズナブル。今まで泊まった数々の宿の中でも5本の指には入る、何一つ文句のない最高の宿だった。

 カンボジアの支配を逃れたタイ族によって王朝が建てられ、大王と呼ばれる3代ラムカムヘーン王のときに領土が最大となったスコータイ。その統治によって文化が繁栄し、クメール文字を改良したタイ文字が生まれ、陶芸が起こり、仏教が導入された。
 成立から200年後に王位後継者が絶え、アユタヤ朝に併合。現在、タイ人の心を支える仏教は、このスコータイ朝時代に基礎が作られているという。

 世界遺産でもあるスコータイ歴史公園は、東西1,8km、南北1,6kmの城壁に囲まれている旧市街地域を中心に展開しており、市内から約12km程離れている。私は乗り合いソンテウに乗り込み、市内から旧市街へと向かった。

 到着した歴史公園の手前には貸し自転車屋があった。広い敷地の歴史公園内や城壁外に点在する遺跡を徒歩で回るのは効率が悪いので、自転車をレンタルして周辺を散策することにした。

 歴史公園へ入ってすぐの所に、スコータイで最も重要な地位とされた寺院・ワット・マハータートがあった。堀の手前や正面から見ると、水面に姿が映し出されて美しい。
 中央には白くて大きな仏座像が置かれ、沢山の丸い柱で囲まれいた。蓮のつぼみの形を模しているという仏塔は、スコータイ独特の様式らしい。

 もうひとつ代表的な遺跡に、四方を壁で囲われた天井のないワット・シーチュムという寺院があった。この寺院の中には、高さ14,7m、幅11,3mの「アチャナ」と呼ばれる仏座像が鎮座している。これはスコータイ様式による最も優れた仏像と評価されているらしい。

 寺院の壁は約3mの厚みがあり、壁には仏教説話が掘り込まれている。仏像の頭部には国王専用の部屋があり、歴代の国王はここからあたかも仏像が話しかけるようにして御信託を下したのだいう。
 仏座像の正面の壁だけ切れ目のような部分があるので、遠目からみると中から覗き見られているようになる。

 公園内の遺跡も見応えがあったが、城壁の外の西側遺跡群は木々の中に建っていたので、それらをサイクリングしながら見て回ったのが一番雰囲気があった。
 居心地の良い宿に戻り、カウチで横になりながらシンハー・ビールを何本も注ぎ込んだ。翌朝目覚めた時はこの町の名前と同じように、幸福な夜明けだった。




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