地図を入手 (香川〜徳島) 2002年


 ご接待を受けた兄ちゃんの家で心地よく目覚めた。朝食もご馳走になり、おまけに昼飯の為にとおにぎりまで持たせてくれた。
 世話になった礼を告げて別れる際、後でお礼の手紙を書こうと兄ちゃんの住所を聞いたが「そんなことは気にしなくていいんですよ」と簡単に諭された。昨日会ったばかりの見ず知らずの旅人にここまでのもてなしをしてくれる親切には、驚くばかりだった。

 私は昨日に85番八栗寺を訪れていたが、一緒に泊まった学生はまだだったので、ここで別れてそれぞれ出発。その後、86番志度寺、87番長尾寺と順調に巡った。
 88番の大窪寺は山の中腹に位置しているので、3、4時間は自転車を押しながら坂道を上がらなければならないと覚悟していた。

 1時間程坂道を上がっていた辺りで、一台の軽トラックが私の横を通り過ぎ、その先で停車した。何かと思ったら、その軽トラックを運転していたのは、昨日83番一宮寺で会った話し好きなおじさんだった。

「大窪寺まではまだかなりの距離があるので時間がかかる。どうせ自分も行くから、ついでに自転車を荷台に乗せて連れてってやるよ」
 私は自転車で自力の旅をしていたので、この親切な勧めに少々ためらった。しかし、これも何かの縁だ。この距離だけでも楽していいだろうと自分を納得させ、車に乗せて貰うことにした。私は別にお遍路でも修行僧でもないのだ。

 大窪寺は八十八ヶ所の寺を順番に周ってきた者にとってはゴール地点だが、愛媛にある54番の寺からスタートした私には通過点に過ぎない。大窪寺の後は1番霊山寺に行き、そこからまた順番に巡って行こうと考えていた。

 その事をおじさんに話すと、ここからなら先に10番の切幡寺へ行き、そこから1番の霊山寺までを逆に周ったほうがいいという。
 地図で見ても確かにその方がスムーズに周れそうだったので、ここから10番切幡寺へ向かい、そこから1番霊山寺までは逆に巡った。

 昨日会った学生は、ツーリングマップルというバイク用の地図を持っていた。これは詳細な道以外に、観光地や温泉情報、キャンプ場や宿泊施設などの情報も記されている優れたものだった。

 私は高松の観光案内所で貰ったおおざっぱな地図しか持っていなかったので、これはかなり使えると考え、同じものを途中で寄った本屋で購入した。これさえあればこの先は道に迷うことは無くなるだろう。

 10番の寺から1番まで逆に巡った事で時間や距離が短縮出来たので、今日は13の寺を巡れた。5番の地蔵寺で会った八十八ヶ所をすでに6周したというエキスパートのおやじから、1番霊山寺の近くでテントを張るならドイツ村公園がいいとの情報を聞いていたので、今夜の寝床はその公園にした。




Copyright (C) 2019 諸行無常 All Rights Reserved