老人は頑張っている (小木〜両津) 2010年5月22日


 両津で鬼太鼓のイベントが開かれるのは明日なので、今日一日は特別やることがない。そこで、旅の最初にやり残した事を遂げようと、小木港からバスに乗って真野にある佐渡歴史伝説館へ向かった。目的は佐渡の歴史ではなく、土産屋で働いているジェンキンス氏を見るためだ。

 伝説館に到着後、入口の前で掃除をしていた女性の係員に氏がいるかを確認したところ、今日は出勤してるというので入場券を買って中に入った。
 館内は佐渡にゆかりのある歴史上人物や伝説を、等身大ロボットなどで紹介する体感型ミュージアムになっていた。それらを抜けた先に土産コーナーがあり、そこの煎餅屋にジェンキンス氏がいた。

 女性の店員は観光客にしきりに煎餅を勧めていた。これはここでしか売ってないもので、売り上げの2%が拉致被害者の救済に使われるという。
 煎餅と一緒にジェンキンス氏著作の「告白」という文庫本が売られていた。私は昨日から本を探していたのでこれはちょうどいいとその本を購入すると、中にあった氏のサイン横に、その場で本人が日付を入れてくれた。

 英語で写真を撮ってもいいかと尋ねると、煎餅を持ってポーズをとってくれた。きっと毎度の事なのだろう。女性の店員も一緒に写してあげますと私のカメラで撮影してくれた。ジェンキンス氏はここで看板男になっているのだろう。

 土産屋の中には「Now, I'm happiest. I've ever been」(私は今が人生で一番幸せだ)と書かれた氏のコメントが貼られていた。その後、次々とやってくる観光客を相手に写真を撮られる氏の表情は、私には疲れているようにも思えた。

 伝説館を出てベンチで休憩していると、近くで芝刈りをしていた爺さんと会話になった。私が島を一周した事を話すと、爺さんは面白いことを教えてくれた。
 佐渡では高校が主催する毎年恒例の一周ウォーキングがあるらしく、それは一晩中歩いて4日で島を一周するらしい。
 しかも、最高記録は3日だという。おまけに佐渡の人間なら60歳でも1時間で6、7kmは歩くらしく、老人でも5日で島を一周出来るという。

 私は今回ゆっくりペースで歩いたので、一周に要したのは8日間だった。仮に速いペースで歩いても5、6日はかかっただろうから、老人のスピードは驚くべき速さ。老人だから体が軽くなって、風で飛ばされてるからじゃないかと疑いたいくらいだ。

 伝説館へ向かう国道350線の電柱には「ジェンキンスさんは伝説館で頑張っています」と書かれた張り紙がされていた。佐渡の農業や漁業を支えているのも高齢者。この島では老人が頑張っているようだ。

 今回の旅では途中で車に乗ったので、その分をいくらか補おうと、伝説館から両津までは歩くことにした。途中で真野御陵や妙宣寺の五重塔を見学。それから県道65号線へ出てひたすらに両津を目指した。

 トキの森公園へ行く時にバスを降りた行谷まで来ると、小学校で運動会が行われていた。やっていた演目が親子による佐渡おけさ。見たかったが運悪くちょうど終了してしまった。だが、佐渡ではやはりこういう種目があるのだと知れただけでもいい。

 加茂湖畔まで来たので、道の駅「芸能とトキの里」に立ち寄った。特別変わったものはなかったが、面白かったのはトキの生態について書かれた「放鳥トキ情報」があったこと。
 トキは1日で180km飛び、高さは2000mまで上がるという。またメスの方がオスよりも遠くへ飛ぶようだ。小学生が書いたようなレポートだったので、これも佐渡おけさのように小さい頃から学ぶ、島の文化の一つなのだろう。

 両津に到着すると、鬼太鼓が行われるオンデコドームは既に準備が整っていた。隣の両津公園が今夜の寝場所なのだが、向かいは民家で人の往来もけっこうあったので、暗くなってからテントを張ることにした。

 夜になってテントで横になっていると、ステージの方から太鼓の音が聞こえてきた。何かやってるのかと行ってみると、前夜祭が行われていた。
 酒が無料で振舞われた前夜祭は、民謡が3組に鬼太鼓が1組という1時間のステージ。明日を待つまでもなく、早々にその一部を見れたのはラッキーだった。 

[この日の写真]




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