祝いの晩餐 (松ヶ崎〜小木) 2010年5月21日


 松ヶ崎から小木港までは約25km。急がなくとも昼過ぎには一周を達成できるので、ゆっくりと歩いていく。松ヶ崎の先にあった多田は佐渡国稲作発祥の地で、佐渡で最初に稲作を始めた作神の三助とお菊の銅像があった。
 三助は土佐(高知)から流され、お菊は加賀(石川)から流されて、この地で出会って夫婦になったいう。やはり佐渡は流れ者が多いようだ。

 赤泊はこじんまりした港だった。ここにあったカニ直売所の弥吉丸に立ち寄ると、バイ貝という聞いたことのない貝が1個80円で売られていた。
 茹でれば食えるというので2個買うと、小さな貝を1つオマケしてくれた。カニの値段もかなり安く、けっこう客が来ていた。

 さらに赤泊のA−COOPで探していた小分けの醤油を発見。ついでにトビウオのすり身といごねりも購入。佐渡の食い物を3つもゲットしたので、今夜はこれで一周達成の宴が出来る。

 その後は黙々と歩き、13時半に小木港に到着して一周を達成した。今回は途中で車やバスに乗った部分があるので達成感はあまりなかったが、それでもよく歩いたものだ。
 港のベンチに座りビールで祝杯を上げていると、掃除のおばちゃんたちがやって来た。私が海岸でキャンプしてた経緯を話すと、アワビなどは食わなかったのかと聞いてきた。

 どうやら大野亀辺りでは1m潜っただけでアワビが捕れたらしい。その辺は密漁禁止なのだが、おばちゃんは「その場で食ってくれば問題ないのよ」と笑いながら話していた。
 先に知ってれば獲ることも考えたが、この時期の水の冷たさじゃ海に潜る事は無理だったろう。

 明日は鬼太鼓のイベントを見るため両津に行くので、帰りはまた小木に戻ってこなければならないと思ったが、考えてみれば両津から赤泊からもフェリーが出ていたのだ。
 しかも、両津は1日に便数が多くあった。どうやら私が利用したこの小木港が、一番利用客が少ないらしかった。

 両津からのフェリーは新潟港に到着する。新潟から東京の池袋行きのバスがないか小木港で聞いてみると、けっこうな便数があるようで時刻表をくれた。
 調べてみると23時発の深夜バスがある。これなら両津から19時半のフェリーに乗ってもそのバスに間に合うので、明後日の鬼太鼓のイベントは一日中たっぷりと見れる。

 初日は気付かなかったが、散策してみると小木にも商店街があった。本が買いたかったので本屋に行ったが、雑誌やマンガがあるだけで文庫本が全然売ってない。
 店のおばちゃんに聞いてみると、文庫は売れないから置いてないという。文庫だけでなく本自体まったく売れないので、店を畳もうかと思っていると嘆いていた。

 すぐ先に文房具と本を売る店があったのでこちらも見たが、商品のラインナップはやはり同じ。ハードカバーの本がけっこう売られていたが、ほとんどの表紙が色褪せていた。文章を読む前に、本自体がここに長い間置かれていることを物語っていた。

 今夜の寝場所は小木の城山公園。小山の上にある公園は芝生でかなり広く、便所や東屋、水道もあるという完璧なキャンプ地だった。そこで昼間買った食材を料理して、一周達成祝いの晩餐を楽しんだ。

 佐渡のソウルフードであるいごねりは味にこれという特徴はなく、コンニャクか心太といったもの。たぶん醤油だけでなく、生姜やネギを加えればもっと美味かったのだろう。
 トビウオのすり身はツミレにして食べたが、これはなかなかいいツマミになった。バイ貝は説明しにくい独特のクセがあったが、歯ごたえがあって珍味だった。

 そのバイ貝は買った時は殻に入っていて分からなかったが、茹でた後に中身を取り出してみると、形は男性器と女性器をくっつけた様な異様なものだった。たぶんバイ貝は両生類でバイセクシャルなのだろう。

 とにかく、今日は佐渡ロングウォーク210を達成した事で満足だ。途中で二回車に乗っているので正確には210km歩いてないが、そんな事はどうでもいのである。流れに身を任せて旅が面白くなればそれでいいのだ。

[この日の写真]




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