ゆっくり歩こう佐渡の道 (達者〜入崎) 2010年5月17日


 旅の初日に小木港で気になる交通安全標語の看板を目にした。それは「美人多し ゆっくり走ろう 佐渡の道」というものだ。
 初日に佐渡太鼓体験交流館で可愛い姉さんに会ったが、それを除けば今日までの2日間はこれといった美人にはまだ出会ってない。

 今日はどこかで会えるだろうと、標語通りにゆっくりと歩いていくことにした。昨日開かれていたロングライド210は終了したので、道路からチャリダー姿も消えて静かになった。もうチャリに轢かれる心配もない。

 交通安全標語には他にもこんなのがあった。「交通違反はもうおけさ」「スピード違反はスルメー」「シートベルトは締めてアタリメー」「追い越し違反9000円、佐渡するめ500円」「スピード違反10000円、佐渡ワカメ800円」。するめやワカメはどうでもいいが、やはり気になるのは美人だ。

 美人を探しながら1時間歩くと、海岸に波蝕甌穴郡というクレータのような岩盤があった。この岩には小さな穴が無数に空いていた。これは打ち寄せた波がひく時に、岩盤を渦巻き状に侵食して出来たものらしい。
 その数の多さは世界有数らしく、国の天然記念物にも指定されていた。だが、私が見たいのはもっちりとした肌を持つ美人の女であり、ゴツゴツした男のような岩じゃないのだ。

 美人を求めて先へ進むと、ようやく出会えたのは婆さん。昔は美人だったのだろうが、現在は顔に波蝕甌穴郡さながらの皺が刻まれている。
 その婆さんから聞いたのだが、岩盤に空いた穴の数は日本が世界2位で1位の岩はドイツにあるようだ。私は無数の穴を見るよりも、無数の美人を見たい心境だった。

 綺麗な美人を見かけないので、綺麗な海を眺めながら歩いていく。佐渡の海は透明度があって水が澄んでいるので、海草などもはっきり見える。
 それと、そこらじゅうに田んぼがあり、蛙の泣き声が聞こえてくる。ある田んぼでは、たぬきが野良猫のように走っていた。自然が豊かな証拠だろう。

 田んぼの横には墓があり、その墓石には「〜家」でなく、「先祖代々之墓」と刻まれているものが多かった。拝むべき対象は、豊穣の土地を守ってきた先祖という表れだろう。

 目的地の入崎海岸に到着するまでに出会ったのは婆さんだけ。そこでで見れたのも色白の美人ではなく、白砂の綺麗なビーチ。隣接していた入崎キャンプ場は有料なのだろうが、誰もいなかったので無料で使用出来た。

 まだ昼前だったがこの先の予定を計算して、今日はここでのんびりすることにした。周辺を散策してみると、1km先にA−COOPがあったのでそこで酒と食料を調達し、キャンプ場に戻って東屋でまったりと過ごした。

 キャンプ場に半日もいれば美人の一人でも来るかと思ったが、現れたのは地元のおっちゃんだけ。この人は大工で、かつて東京に住んでいたことがあると話してきた。

 若い頃は総理大臣だった岸信介や有名な政治家の家を、東京の渋谷や代田に建てたという。昔は労働基準法もうるさくなかったので、夜中まで働けば3倍の金を稼げたそうだ。バブルの頃などは6倍の日当だったらしい。

 佐渡の爺さん婆さんはほとんど農家で汚い格好をしてるが、億くらいの財産を持っているとも言っていた。このおっちゃんも金持ちで可愛い娘でもいたら「養子にして下さい」とお願いしたのだが。

 おっちゃんとの会話は面白かったが、それよりも美人と話したかったのが本音。しかし、結局この日出会ったのは、この大工のおっちゃんと甌穴婆さんだけ。美人に出会ったら仲良くなって、たらい舟デートをしたかったのだが。
 しかし、まだ旅は前半なので、この先で巡り会うチャンスはある。その為にも、これからもゆっくり歩いていくとしよう。

[この日の写真]




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