アルコール、もっと (シェムリアップ) 2009年7月8日〜11日


 仏教3大遺跡の一つであるアンコール・ワット。シェムリアップはその観光の拠点となる町。遺跡は広大な範囲に点在しているが、代表的なものは町からそんなに遠くない。
 レンタルした自転車でアンコール・ワットを訪れると、自転車置場には麦藁帽子を被った女たちが大勢いた。彼女たちの目的は「自転車を見張ってるから、帰りに水を買ってくれ」ということ。停めるのは無料だし鍵を掛けてるのだから、見張るも何もないのだが。

 水がなかったので戻った時に買ってあげようと料金を聞くと、2リットルの水が2ドルもする。普通に買ったら料金は10分の1だ。まけようとしても一向に引かない。買わなくても問題はないのだが、むこうがまけないので、こちらが可愛い顔に負けて買ってあげた。

 カンボジアではドルが普通に通用する。現地通貨のリエルでも支払いは可能だが、ドルで請求されることが多い。
 1ドル=4000リエルといったどんぶり勘定で、屋台や店などではドルで払って釣りにリエルを貰う、もしくはドルとリエルを合わせて支払うといった変なシステムが定着している。コンビニの店員がリエルの釣りを「・・・セントです」と言って返してきたのも妙だった。

 アンコール・ワット周辺にはアンコール・トムやタ・プロームという遺跡もあり、見方次第ではこちらの方が見応えがある。
 私はこの3つで満足したので郊外までは足を運ばなかったが、40km離れた所にあるバンテアイ・スレイという遺跡は、宮崎駿の「天空の城ラピュタ」のモチーフになっているとか、いないとかとの話だった。

 遺跡エリアのレストランで昼飯を食べてる時、土産売りの子供たちが何度もやって来た。中でも粘ってきた7歳の女の子2人は「学校に行くお金が欲しいから買って」と泣き落としの文句で攻めてきた。
 実際にこうやって自分たちで稼いでるのだろうか。欲しい物がないので売り上げに協力は出来なかったが、こんな所からカンボジアの現状が窺い知れる。

 遺跡エリアはのどかな一本道なのでサイクリングにちょうどいいが、自転車のサドルがボロいのでケツが痛くなる。
 聞いた話ではカンボジアにある自転車は、日本から流れてきたものが多いという。盗難ものか不法駐輪で集められたものか分からないが、防犯登録のシールが付いてるものや、かつての持主の名前が書いてあるものなどがあった。

 遺跡観光を終えて宿に戻ると、小学生たちが旗や写真を持って道路の両側に並んでいた。宿のおばちゃんに何事か聞くと、これから王様がやって来るのだという。これはタイミングがいいとしばらく待ったが、一向にやって来る気配がない。
 この「これから」が2時間後であり、おまけに黒塗りの車があっという間に何台も通り過ぎただけで、どれに王様が乗っていたのかも分からなかった。

 旗を振って出迎えるというのは万国共通のもので、王様の権力を知らしめる教育の一環なのだろう。そういえば、カンボジアの小学生は朝がやたらに早く、まだ6時だというのにすでに学校に登校していた。その代わり昼には終わるらしい。

 カンボジア料理には特にこれといったものがなかったが、屋台でよく見かけた一品に「ポンティアコーン」という孵化寸前のアヒルのゆで卵があった。そのポンティアコーンを食べてみようと屋台に足を運んだ。

 注文して出てきたのは卵3つと葉っぱにライム。食べ方が分からないので隣の奴を見ると、まず卵を台に乗せてスプーンで叩いて割っていた。
 見よう見真似でやってみたがうまく割れず、ただ破片が飛び散るだけ。向かいにいた若い女がこれを見て、屋台のおばちゃんに割ってくれるよう頼んでくれた。そして、葉っぱ、にんにく、唐辛子、ライムを混ぜて食べるのだと教えてくれた。

 孵化寸前といっても見た目にグロテクスさはなく、食うとかなり歯応えがある。スパイスが効いてかなり辛いが、ビールのツマミに合う。料金は1つ1200リエル。地元人たちはこれを夕食時に3,4個食べていたが、メインなのかおやつなのかは分からない。

 ここカンボジアでは雨季の心配など微塵もなく、空から雨が降る代わりに猛暑で額から汗が降っていた。泊まっていた宿は「タケオハウス」という有名な日本人宿。多くの旅行者がアンコール・ワットに酔いしれて、その感動を語っていた。
 私はアンコール・ワットよりも「アルコール、もっと」と、75セントの生ビールを何杯も注文しては酔いしれて、バカ話で盛り上がった。




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