南国のフィーバー (辺戸岬〜安波) 2010年3月11日


 昨日うろついていた犬が夜やって来ることはなかったが、朝の用を草陰でしていると、タイミング悪くその犬が吠えながら現われた。よりによって何でこういう時に現われるんだ。
 こっちは言ってみれば無防備な状態だ。朝飯でも食べてる時に来れば、少しは分けてやったのに。身動きが取れないのでので、こちらも負けずに一喝。切羽詰った状況が伝わったのだろう、あっけなく吠えながら逃げていった。

 岬からの道はアップダウンが多いが、両側には木々が多い茂ってるので、森林浴をしながらのウォーキング。ずっと海ばかり見ていたので、静かで気持ち良い。何よりも強風が止んでくれた事が嬉しい。

 辺戸岬から下りた奥の集落は、名の通りに奥地にある。家も数件しか見当たらないので、人口も数える程度しかいなそうだ。
 ここでは道端で簡易イスに座って絵を描いている年配者を数人見掛けた。この辺で流行の遊びなのだろうか。
 黄色い大きなコンテナを家にしている人もいた。この辺りは多少不便そうだが、静かに暮らすにはもってこいの場所だろう。

 奥の村には国道58号線の起点があり、その先から県道70号線になっていた。58号線は沖縄だけでなく、鹿児島県鹿児島市から種子島、奄美大島を経て沖縄本島に達する道路であるようだ。
 名護市で若者に道を聞いたとき58号線のことを「ごっぱち」と言っていたので、地元の人はそう呼んでるのだろう。

 足は時折痛むが歩く事にはすっかり慣れ、鼻歌を歌いながら歩ける余裕も出てきた。さらに昼からは久々に太陽も姿を現した。ようやくめんそーる沖縄から南国の沖縄にめんそーれされたようだ。
 やんばるはヤンバルクイナの生息地。そのヤンバルクイナも目撃。気温も運気も上昇で、まさに南国フィーバーだ。

 だが、南国のフィーバーはバカンス気分だけでなく、本当のフィーバー(熱)もプレゼントしてくれた。昨日の寒さで風邪気味になり頭痛がする。快調だった腹の具合も急降下し、歩いている間に叢に駆け込むことが3回あった。

 集落には地名の付いた共同店が必ずある。そこにはトイレや休憩場があるので休むのに好都合。集落から集落の間にはまったく民家がなく、やんばるの森が広がっている。沖縄は海というイメージが強いが、私はこの辺りに沖縄らしさを強く感じた。

 伊部集落の辺りに「闘争の碑」という石碑があった。この地で米軍が行おうとした実弾演習を、小学生も含めた近隣の村人たちで強行阻止した記念碑らしい。その勇敢な行動があったからこそ、このやんばるの森は守られたのだろう。

 今日の目的地である安波(あは)集落はそこそこ大きかったが、目ぼしいキャンプ地が見当たらない。諦めて通り過ぎようとしたところ、安波川沿いにちょっとした空き地を発見した。地元民でもまず来ることはなそうだったので、そこにテントを張った。
 人気がない場所なので、辺りからは鳥のさえずりと川のせせらぎが聞こえてくるのどかな場所。数日間は風音に悩まされていたので、今夜は落ち着いて眠れそうだ。

 旅の初日にもあったが、今日も老夫婦や若者カップルから車に乗るかと声を掛けられた。寒さも無くなり気温も上昇。久々に暖かさに包まれた一日だった。

[この日の写真]




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