めんそーる沖縄 (大宜味〜辺戸岬) 2010年3月10日


 最初の2日間は快晴で気温も高く、まるで夏のようだった。南国の沖縄にめんそーれと迎えられたと思っていたが、そんなことはなかった。ここはめんそーる沖縄だ。
 雨は止んだが風が相変わらず強く、めちゃくちゃ寒い。しかも、歩いている場所が先細りになる北部の海岸線なので、風をもろに受ける。体感温度はおそらく1,2度くらい。

 大宜味村や国頭村(くにがみ)の周辺は、やんばると呼ばれる自然の多い地域。そのやんばるを満喫出来ると思ったが、天気は悪いし観光する時間もない。満喫出来るのはがんばる自分だけだ。

 左は海で右は森という単調な景色がまた飽きてくる。歩いていれば地元の人と交流できると期待していたが、そもそも歩いている人間が一人もいない。
 道路には「カニ横断注意」や「ヤンバルクイナ飛び出し注意」などの看板があったので、ささやかなハプニングを期待したがそれもなし。

 休憩に10分立ち止まると、その間に体が冷えてくる。大体風をよける建物がないのだ。息を吐けばタバコを吸ってもないのに白い息が出る。荒れる東シナ海もなんだか日本海に見えてきて、今自分が沖縄にいる事が疑わしくなってきた。

 もはやこれは旅でもニルヴァーナ(涅槃)の境地に達する修行でもなく、歩兵隊の過酷なトレーニングでしかない。「Smells Like Teenage Sprits」の如く、10代の頃のように我武者羅で愚かになって進むしかないのだ。

 夕方前の一番辛い時間帯に、またそのトレーニングの内容がハードになる。宜名真トンネルから辺戸岬へのアタックは上り坂。沿道にソテツが生える道をひたすら上る。
 岬付近は崖だろうと思っていたが、畑が広がり緑が溢れていた。中央には茅打ちバンタという岩山もそびえて眺めも良い。がんばってきただけに、ここに来て初めてやんばるに触れたような気がする。

 がんばる自分でやんばるを歩き、16時前にはるばる辺戸岬に到着。一通り岬をうろついたが、寒さのあまりここまで歩いた感動もすぐに風で飛ばされた。最北端到着の達成を祝おうとオリオンビールを飲むと、さらに体温が低下。
 車で訪れている観光客は、皆一様に暖かそうな格好をしている。一人の女などは首にマフラーを巻いていたくらいだ。本当にここは沖縄なのかと、震えながら再度疑った。

 寒さに耐えられなくなったので、岬の売店の裏手にあった空き地を今夜の寝床に決定。そこへ向かうと、岬の駐車場を徘徊していた白い犬が吠えながら追いかけてきた。
 首輪をしてるので近所で飼われてる犬だろう。こいつに空き地まで来られると誰かが来てしまいそうなので、ついて来るなとどうにか追っ払った。

 泡盛のお湯割で暖を取るが、冷え切った体はなかなか温まらない。未だ風が強く、テントもかなり揺れる。今夜も寒さそうだ。こんなに寒いのは珍しいと、岬の売店のおばあも言っていた。

 ラジオの天気予報を聞いてみれば、今日の最高気温は例年より7度下回る14度で、1月の最低気温よりも低かったとのこと。北部では最高気温が10度で、体感気温は0度だったとも伝えていた。
 まさにめんそーる沖縄だ。私が今いるのは辺戸岬。寒さと疲れでヘドが出る前に、寝袋にくるまってとっと眠りに就いた。

[この日の写真]




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