難しかないさ (許田〜大宜味) 2010年3月9日


 8時の出発とともに雨が降りし、次第に強くなる。おまけに風も強い。昨日は小雨だったので傘を差していたが、今日は風が強いのでそうはいかない。去年ベトナムで買ったポンチョを取り出し、それを着用して歩いた。
 しかし、ベトナム産の安物なので強い風が吹くとすぐにボタンが外れ、下半身などは結局濡れる始末。それでも着ないよりはマシだった。

 名護市内を抜けて北側の58号線に出る。海岸線に出ると風が半端じゃなく、まるで台風のよう。海もかなり荒れている。風をもろに受けながら歩いていると、とうとうポンチョが破れてしまった。
 安物だという原因もあるだろうが、歩いていた町の名前がなんと津波(つは)。飲み込まれなかっただけでもマシかもしれない。

 しばらく進むとファミリーマートがあったので、新たなレインコートを購入。これでボロボロのポンチョを纏ったホームレス姿から、ようやくまともな姿に戻った。
 沖縄にはファミリーマートが多い。ローソンとCOCOというコンビも見掛けるが、セブンイレブンはまったくない。
 コンビにで売られているおにぎりには、スパム入りや油味噌入りという沖縄ならではの商品がある。カップラーメンにも沖縄限定のそばがあった。

 雨ニモマケズ風ニモマケズでひたすら歩き、15時半頃に目的地の道の駅おおぎみに到着。今夜はここでキャンプをしようと考えていたが、雨を凌げる東屋もなく、これといったポイントもない。

 唯一出来そうだったのが、建物の裏にある従業員用の駐車スペース。あまり良い場所じゃないが、建物の裏にあるので雨風は凌げる。だが、そこにテントを張るには従業員が帰った後でないと無理なので、その時間まで休憩室で休んでいた。

 沖縄にはキジムナーという妖怪がいることを、小学生の頃に知った。名前だけでどんな存在か知らなかったので調べてみると、キジムナーは沖縄諸島周辺で伝承されてきた伝説上の妖怪で、ガジュマルなどの古木の精霊。
 そのキジムナー伝承の発祥の地というのが、大宜味村にある喜如嘉(きじょか)という集落で、その地名を取ってキジムナーと呼ばれてるという事だった。

 休憩室の観光案内を見てみると、大宜味村の肩書きは「長寿の里」「芭蕉布の里」「シークワサーの里」「ぶながやの里」ということだった。室内には赤毛でターザンのような格好をした、子供くらいの大きさの人形もあった。多分これがキジムナーだろう。

 それより「ぶながや」が何だか分からない。店員に聞いてみると、その赤毛の人形がぶながやだと言う。あれはキジムナーじゃないのかと聞くと、地元ではそれをぶながやと呼ぶと教えてくれた。

 缶詰をツマミに泡盛を飲みながら休んでいると、18時頃ようやく店員が帰り支度を始めた。休憩室は24時間開放だと思っていたが、ここも閉めるから出てくださいと言う。人がいなくなったので建物の裏にテントは張れるが、どうもイマイチ乗り気がしない。
 人目にはつかない場所なのだが、万が一バレた時に出て行けと言われるのも面倒。屋根がなく雨ざらしの場所でも確実な所を探そうと、賭けで先へ進むことにした。

 30分程歩くと大宜味郵便局の向いに小さな浜があった。雨が降って風も強烈だったが、ここしかないとテントを設営。
 テント内にいれば風は当たらないが、強風なので揺れが酷くて音もうるさい。しかも、寝袋は夏用で薄く、準備してきた服もトレーナーと薄いジャンパーだけなので寒い。暖をとるのは泡盛のお湯割りだけだった。

 歩くのには大分慣れてきたが、それでも一日中歩くのは疲れる。「なんくるないさ」で始めたこの歩き旅だが、「難しかないさ」と言い換えた方がしっくりくるようだ。

[この日の写真]




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