宗教が共存する町 (カトマンズ) 2003年5月5日〜14日


 長居したポカラから首都カトマンズへ移動した。腰を据えたのは安宿が集まるタメル地区。土産屋やレストランがひしめくこのエリアは、エキゾチックな雰囲気があった。

 標高1300mに位置するカトマンズは、人間よりも多くの神々が棲んでると言われる神秘の世界。ヒンドゥー教と仏教が共存する独特の宗教文化が育まれ、重要な歴史的建造物がひしめき合うという世界にも類を見ない場所だ。

 ここでは自転車をレンタルして散策した。インドのような猥雑の中、赤レンガと木材を巧みに組み合わせた建築技法の建物が立ち並ぶ。
 デザインは日本や中国と似ており、町行く人々もモンゴル系の顔立ち。外国にいるという違和感はあまなく、どこか郷愁を感じるほどだった。

 シヴァ神を祭るネパール最大のヒンドゥー教寺院パシュパティナートは、ヒンドゥー教を国教とするネパールでは聖なる場所。
 寺院に面しているバグマティ川は、ガンジス河に通ずる支流にあたるため、ここで火葬されて遺灰を川に流すのがヒンズー教徒の願望だという。川に隣接した複数の火葬台では、絶えず死者が火葬され、独特の匂いが周辺を包んでいた。

 町にあるダルバール広場にはクマリの館がある。ここにはクマリという少女の生き神が住む。クマリはネパールの守護神タレジュ女神の化身とされて崇められている。
 言い伝えに従って選ばれた3、4歳の少女が、生き神クマリとして館に住み、神としてのふるまい方を教えこまれる。初潮を迎える12、13歳まで生き神として生き、次の少女へと交代する。

 9月に行われる祭り以外は、館から外に出ることはない。だが、祈りを捧げると、館から顔を出すこともあるようだ。その時にクマリの写真を撮ることは禁止されている。その館へ行ってみたが、クマリを目にすることは出来なかった。

 中心部の西にある丘の上には、スワヤンブナートという仏教寺院がある。400段の急な石階段を上った所には、南アジア最大ともいわれる仏塔が建っている。
 仏塔には仏陀の知恵の目が四面に描かれ、塔の周囲にはチベット仏教の特徴を示すマニ車が並んでいる。右回りに歩きながらこのマニ車を手で回していくと、お経を唱えたことになるそうだ。

 カトマンズには公認カジノがあり、24時間営業している。その一つに足を運びルーレットに熱中していると、日本人の女とネパール人の男の2人組が声を掛けてきた。
 ヒマラヤ山脈が一望出来る宿を知ってるから、泊まりたかった連絡してと、日本人の女は電話番号が書いた紙を渡してきた。何か変な2人組だなと感じたので、話だけ聞いといた。

 ネパール人の男の方は、見た事があるような顔だった。後に思い出したのだが、この男はどこかの安宿にあった情報ノートに「カトマンズのカジノにいる詐欺師」と、写真を貼られていた男だった。

 生き神のクマリには見れず、変わりに出会ったのは詐欺師の男。下心で女に電話してその宿に行ってたら、騙される羽目になったかもしれない。それでなくてもカジノで既にいくらか失ってしまっていた。




Copyright (C) 2019 諸行無常 All Rights Reserved