輝いてたものは (キンプン) 2003年7月2日〜4日


 ミャンマー人に絶大な人気を誇る宗教地のゴールデン・ロックを見ようと、ヤンゴンのハイウェイ・バスターミナルからバスに乗りチャイティーヨに向かった。
 乗ったバスは目的地行きではなく、10km手前のチャイトー行き。ヤンゴンを出発したバスは平野に広がる田園風景を4時間半走り、チャイトー駅へ到着。駅の反対側からピックアップ・トラックに乗り換えて、チャイティーヨ手前のキンプンを目指した。

 キンプンへ向かう途中で、ロンジーをはいた日本人の若者が乗ってきた。関西出身のこの若者は、3ヶ月ほどアジア各地を回りミャンマーに来たという。キンプンは町というより村で、歩いて周りきれるくらいの小さな所だった。

 道路は舗装されてなく、村の一角には藁葺き屋根の高床式といった、簡素な作りの家が集まる場所もある。村では托鉢層が列を作って歩く姿も見かけられ、持っている黒い釜のようなものに村人が食事を分けていた。

 ゴールデン・ロックには関西出身の若者と一緒に行った。利用したのピックアップはダンプトラックで、座席の荷台には屋根もなかった。
 同乗していた大学生の連中が大声で歌ったり歓声を上げたりと、やたら賑やかなダンプは、アップダウンのある坂道をジェットコースターのように疾走していった。到着した場所からゴールデン・ロックまでは、勾配が急な坂道を30分歩いて上がった。

 ゴールデン・ロックの正式名称はチャイティーヨ・パゴダで、ミャンマー人は入場が無料。現地人になりすましてチェックポイントを通り過ぎようかと思ったが、しっかりと6ドルの料金を徴収された。

 入口からは土足厳禁なので靴を脱いでしばらく歩いていくと、10歳くらいの可愛らしい少女がついて来た。外人の私たちに興味があってついて来るのかと思っていたが、少女の目的は靴を預かる代わりのチップ。追い払うのも可哀想だったので靴を預かってもらい、少々のチップをあげた。

 奥へ進んで行くと、断崖の上に今にも落ちそうなゴールデン・ロックがあった。岩の前では数人の仏教徒が座り込み、手を当てたりして祈ってる。大勢の信者が押しかけて一斉に手を当てたら、崖の下へと落ちるんじゃないだろうか。

 岩下の斜面のには墓標のような白色の小さいパゴダが多く並んでいるので、そうなったらこのゴールデン・ボールは全部を弾き倒し、豪快なストライクを出すだろう。

 キンプンに戻り村を散策すると広いサッカー場があり、子供たちが裸足でサッカーをしていた。近くで眺めていると手招きして仲間に入れというので、私たちも裸足になり日が暮れるまで一緒に楽しんだ。

 サッカーが終わると、一人の少年が自分の家へ招いてくれた。高床式のその家には電気はなく、明かりは蝋燭。家にいた兄弟は学校で使っている英語の教科書を持ってきて、知ってる単語を復誦しだした。

 しばらくすると仕事を終えた親父が帰ってきたが、突然訪れていた私たち外人2人を邪魔者扱いすることなく、噛みタバコとお茶のもてなしまでしてくれた。まったく会話は出来なかったが、貴重な体験をさせてもらった。

 人気の宗教地にあるゴールデン・ロックは、金粉で輝いていた。山の下の小さな村であるキンプンで輝いていたのは、子供たちの無邪気な笑顔だった。




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