巨大なベル (ヤンゴン) 2003年6月29日〜7月2日


 バングラデシュ、ダッカのZIA国際空港から1時間半のフライトで、隣の仏教国ミャンマーの首都ヤンゴンへ到着した。
 ミャンマーへも陸地の移動で入国したかったが、国境を開いてないのでそれは無理。この国が陸の国境を開けば、陸路でアジアを横断するルートが増えるのだが。

 この頃アジアの東部では、サーズが蔓延して社会問題になっていた。そのため、まずミャンマーの空港でされたのがサーズのチェック。透明の合羽を着てマスクを付けた係員が、乗客一人一人のおでこに黒く細いフィルムをあてて調べていた。

 ミャンマー入国には強制両替があり、200ドルの現金を200FECに変えなければならない。このFECは1ドルと同等なのだが、使用出来る場所が少ないらしく、旅行者を悩ませる代物だった。
 5ドル程のワイロを渡せば両替を見逃してくれるとも聞いていたが、実際どのような事になるか知りたかったので、規則通りに両替をして入国した。

 空港からタクシーでヤンゴン市内中心にある「GARDEN G.H」へ移動。料金の3ドルに早くもFECは使えない。宿の料金は朝食付で4ドル。ここでは支払いにはFECが使えた。
 FECから現地通貨であるチャットへの両替は銀行では出来ず、闇両替が主で相場は1FEC=700〜800チャット。しかし、1ドルだとレートは900チャットになる。宿のオーナーはドルの両替しかやらないと言うので、とりあえず1ドルだけチャットに両替した。

 宿の周辺にはインド系の闇両替たちがいたのでレートを聞いたが、1FEC=650とさらに低い。どこで聞いても同じだったので、諦めてこのレートで100FEC分をチャットに両替した。
 たしかに、FECは使えない代物だ。誰もがドルの現金を欲しがる。国も強制両替という名目を利用して、外貨を手に入れてるのだろう。

 両替も終えて安心したので、早速飯を食いに町へ出た。中華風の飯を扱う屋台が多くあり、種類も豊富であっさりした味の料理もあるようだ。
 大きな酒場もあり、そこでは生ビールが20円程の料金で飲めた。バングラデシュでは酒をほとんど飲めなかった私には、ヤンゴンが天国に思えた。

 宿の真横のスーレー・パゴダは、高さが46mある黄金の仏塔で、仏陀の遺髪が安置されていると言われている寺院。
 パゴタの周りは円形に商店が並び、バスのロータリーになっている。入口は東西南北に4ヶ所あり、入場料などはなかった。

 パゴダ内には祈祷堂や祭壇が設けられ、老若男女の信者たちが熱心に祈りを捧げる。国民の9割が仏教徒のミャンマー。隣のバングラデシュとは違い、陽気に話し掛けてくる奴はほとんどいない。興味はあってもシャイなのだろう。どことなく日本と似た民族性を感じる。同様にこちらが気軽に入っていけない排他的な感じもある。

 酒場から宿へ帰る途中、ライトアップされたスーレー・パゴダが見えてきた。仏塔は昼間よりも一層その神秘さを増していた。生ビールの安さのあまり酔うまで飲んでしまった私には、仏塔はビールのように輝いて見え、その姿は巨大なベルのように映った。




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