アジアらしさ (釜山) 2009年9月7日〜8日


 全州の茶間宿でオーナーから茶のもてなしを受け、朝のゆっくりした時間を過ごしていた。韓国の事について色々と聞きたいのだが、会話する手段は韓国語だけ。
 最低限の単語を使ったぎこちないコミュニケーションの沈黙を埋めていたのは、部屋に流れていたBGM。それは和風な趣もある茶間にぴったりの音楽だった。

 音楽好の私は訪れた国々で民族音楽のCDを買っていた。韓国で買うのはこれがいいと作曲者を聞くと、キム・ヨンドンというアーティストだと教えてくれた。
 朝鮮の伝統的民俗芸能にはパンソリがある。これは1人の歌い手と太鼓の奏者によって奏でられる、物語性のある歌と打楽器の演奏。このパンソリの名前は知っていたが、聞いたことはなかった。

 パンソリのCDがないかとオーナーに聞くと、2,3枚のCDを出して聞かせてくれた。その中で歌声が印象的だったのは、アン・スクソンという女性の歌い手。どちらも韓国では有名なアーティストのようだ。

 全州からは古墳がある慶州、綺麗な女が多い大邸などに行こうと考えていたが、そろそろ帰国しようと、そのまま釜山へと向かうことにした。
 釜山では料金の安いモーテルに宿泊。韓国のモーテルは、日本のラブホテルに相当する場所なのだろう。なんとなくそんな雰囲気があった。だが料金は安いし、部屋にはテレビエアコンの他、シャンプーやドライヤーの類まで揃ってるので便利だ。

 中国から韓国へ向かうフェリーの中で会った韓国人のおばちゃんは、韓国で一番安く泊れるのはサウナだと話していた。団体部屋で雑魚寝してテレビが見れるといった、日本のサウナと同じような場所なのだろう。

 釜山には海産物が豊富にある。港のジャガルチ市場では新鮮な魚が売られ、近辺には刺身を食わす店も多くあった。市場で買った魚をその場で料理してくれる店もあるようだ。
 店頭には日本語の文字も見られ、刺身の盛り合わせ2万ウォンや、アワビのお粥1万ウォンなどが多く目に付いた。

 ここで8千ウォンの刺身定食を食べてみたが、薄っぺらい鯛の刺身で食い応えがなかった。普通の店から考えると高い料金。観光客向けに設定された料金なのだろう。
 釜山では刺身を食べる習慣が昔からあったようだが、それは生魚に唐辛子やニンニク、葉っぱなどと混ぜて食べてたようだ。生魚を醤油とワサビで食べるというのは、やはり日本固有のものなのだろうか。

 ジャガルチ市場よりも面白かったのは釜田市場だ。ここには魚だけでなく、高麗人参や香辛料、野菜なども売られており、周辺には独特な匂いが充満していた。
 人やバイクが行き交い活気立つ市場は、まさにアジアらしい混沌さに包まれている。韓国にもまだまだアジアのパワーが残っているようだ。

 ソウルの南大門市場を観光していた時、前を歩く日本人サラリーマンたちが、韓国人女性の整形について話していた。それによると、5人に1人は整形で、特に目を二重にするのが多いという。
 見た目を綺麗にしたい理由はもちろんだが、高校や大学を卒業して就職活動する前に、印象を良くしようとプチ整形するのも流行っているらしい。

 亡くなった大統領も整形していたくらいだから、韓国では普通のことなのだろう。日本でも芸能人には整形が多いと思うが、何も顔まで西洋かぶれすることはない気がする。

 ソウルや釜山では整形顔の若い女を結構見たが、綺麗というよりは不自然な印象しか受けなかった。それは、アジア人特有の顔じゃないからだ。
 市場に行っておばちゃんたちの顔を見れば、本来の韓国人の顔がはっきり分かる。それが一番活き活きとした顔で、ごく自然なアジアの姿だ。

 日本と同様に近代化している韓国では、アジア的な雰囲気を感じれる場所が少なかった。それは、私がソウルや全州という観光地しか訪れなかったのも理由の一つだろう。だが、最後に訪れた釜山の市場では、本来の韓国を十分に味わうことが出来た。




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