聖地巡礼 (全州) 2009年9月6日〜7日


 代表的な韓国料理といえば思い浮かぶのはビビンバ。様々な具を入れたこの混ぜご飯は、日本でも人気のある一品だろう。そのビビンバが発祥した地というのが、これから訪れる全州だった。

 「韓国の食文化は全州にあり」といわれる全州は昔から食の都と呼ばれ、韓国の中でも最高の味であるという。ビビンバの他にもコンナムルクッパなどが有名らしく、地元の豊富な食材を生かした伝統料理が多くあるようだ。
 そんなグルメな町を見逃すわけにはいかない。ソウルからバスに乗った私は腹の音をクラクション代わりに鳴らしながら、ビビンバを求めて全州へと向かった。

 食だけでなく百済時代には本当の都があった全州には、「全州韓屋村」と呼ばれる景観保存地区もある。ここには韓国の伝統建物である韓屋が800棟密集し、昔ながらの景色がそのまま残っているという。

 その韓屋には宿泊することも出来たので、私はその中のひとつである「養子斎」に足を運んだ。入口に到着すると、ちょうど宿のオーナーが出てくるところだった。
 泊まりたい盲を伝えが、返ってきたのは今日は休みという返事。諦めて普通の宿に行こうとすると、兄弟がやってる別の宿があると紹介してくれた。

 すぐ近くだったその場所は、宿というよりも茶室がメインの平屋で、広い茶間の横に3畳ほどの部屋が一つあるだけ。要するに客は私一人だ。それでも韓屋には変わりないので、ここに泊まることにした。
 同時にやって来た奥さんと娘、友達のようなオッサン3人と共に、茶室でオーナー兄弟から茶のもてなしを受けた。娘は独学で覚えたという日本語がペラペラだった。

 ビビンバを食べようと有名な家族会館へ行ってみたが、運悪く定休日。仕方ないので、近くで賑わってたレストランに入って注文した。
 石焼ビビンバみたいに具がご飯の上に乗ったものを想像していたが、出てきたのはものは別々。おまけに、大量のおかずが出てきて、テーブルの上は一体どれが主役だか分からなかった。

 韓屋は泊まれたがそこは茶間。おまけに理想のビビンバは食べれない。だが全州に来たのはそれだけが目当てじゃない。真の目的はマッコリ・タウンという場所だった。
 マッコリは韓国の大衆向け醸造酒の一つで、日本のどぶろくに相当するもの。微かな酸味と炭酸があるこの甘味の酒は、冷やした状態で飲むのが好まれている。

 そのマッコリを頼むだけで、食べきれない程のおかずが付いてくるというのが、マッコリ・タウンだった。
 酒好きの私にはそんな場所は聖地にも等しく、是が非でも巡礼しなければならない。全州にはその聖地が数ヶ所あったので、中でも一番賑やかだという三川洞に巡行した。

 さぞかし盛り上がってるだろうと想像していたが、通りは閑散として薄暗かった。ライトアップされた看板は点々とあるが、ハングル文字なので何が書いてあるか分からない。
 しかし、マッコリと思われるやかんが描かれてるので、場所は間違いなさそうだ。外から数軒窺うと、満席で繁盛してる店が一軒だけあったので、そこに飛び込み「マッコリ、チュセヨ」と注文した。

 まさに噂どおりの聖地であった。やかんに入れられたマッコリと共に、次から次へと一品もののおかずが出てくる。その数なんと14品。
 焼き魚、チヂミ、カニ、ゆで卵、豆腐とほうれん草、大根と煮魚、芋と枝豆、きゅうり、あわび、貝、朝鮮人参、鍋物、ザリガニみたいな手、何だか分からない小さな黒い貝。注文したのは15000ウォンのマッコリだけだ。

 一人ではあまりにも多すぎる量で、マッコリを含め3分の一は残してしまったが、この巡礼で酔いという徳は積むことが出来た。
 聖地でマッコリを飲んだ後は宿泊地でまったりと過ごし、酔い心地でバッチリと眠りに就いた。たっぷりとエネルギーを蓄えたので、翌朝のアソコはモッコリだった。




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