町の公園にて (京都) 2002年


 朝起きると空は曇り空。出発してしばらく走っていると雨が降ってきた。米を炊くのに使用しているキャンプ用品のガスも切れているので、とにかく町まで走ろうと雨の中を疾走していった。

 入り組んだ海岸線に沿って舟屋が230軒も並んでいる伊根の舟屋は、情緒溢れる風景だった。湾沿いに建つ二階立ての家の一階部分が、どの家も舟の停泊所になっている。
 伊根湾は季節風や日本海の荒波を寄せつけない港で、一年を通じて波が穏やからしい。そのため、舟屋に海水が溢れることもないという。そうでなければ、あんな場所には家を建てられないだろう。

 遊覧船もあったので湾からも眺めたかったが、時間が早く遊覧船はまだ動いてないし、おまけに料金は4080円と高かったのでアホらしくなり、ただ眺めながら通り過ぎた。

 伊根の舟屋から178号線を南下した所には天橋立があった。ここは長さ3、6kmの砂州に約8000本の松林が続く日本三景のひとつである。
 自転車や原付の通行が可能だったので、松林を抜けながら宮津市へ向かった。湾の中に浮かんでいるような松林なので、左右どちらを向いても海が見える。ここを自転車で走るのは不思議な感覚だった。

 宮津駅の近くにはミップルという大型スーパーがあり、その横に島崎公園があった。天気予報では今日は一日雨で、晴れるのは明日の昼から。公園には東屋があったので、今夜の寝床はここに決め、雨が上がるまで休んでいくことにした。

 東屋には友達を待っているという地元の婆ちゃんがいた。よく喋る人で、自分の人生や家族の話、この公園に集まる市の援助を受けて生活してる仲間の噂など、いろんなことを話してきた。

 婆ちゃんが待っていたのは30代の兄ちゃんだった。その後、公園にいる猫に毎日餌をあげに来ているという、50代のおばちゃんもやって来た。
 地元の人たちと会話するのは、どこでも面白いものだ。午前中はこの人たちの話を聞けて、いい暇潰しが出来た。

 隣の大型スーパーに探していたキャンプ用品のガスが売っていたのはちょうどよかった。午後をのんびり過ごしていると夕方には雨が止んだので、展望台に行って天橋立を眺めた。そこまでは自転車や徒歩で上がることが出来ず、専用のケーブルカーに乗っていかなければならなかった。

 天橋立の中を通過してる時は全貌が分からなかったが、展望台から眺めると、日本三景の一つに上げられているのが納得出来た。頭を下にして両足の間から逆さに天橋立を見るやり方もあるのか、訪れていた観光客がそんな姿で見ていた。

 市内を散策して公園に戻り、午前中に会った婆ちゃんから頂いたサツマイモを使い、夕食に炊き込み御飯を作ってみた。しかし、まったく上手くいかず、ちっとも美味しくなかった。やはり焼きイモにするのが良かったのか。

 夕方一度は止んだ雨だったが、また降り出してきた。酒を飲みながら夜の暇を持て余していると、私と同じような自転車の旅人が雨宿りにやって来た。
 新潟から走ってきた彼の目的地は福岡の博多。年も私と同じということで大いに盛り上がり、お互いの旅話をつまみに酒を飲みながら盛り上がった。




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