菩提樹に入り込んだ者 (ブッダガヤ) 2003年4月1日〜5日


 カルカッタからブッダガヤまでは寝台列車の移動で、私はベッドの上段で寝ていた。つけっぱなしだった扇風機の風をもろに受けていた為か、あまりの寒さに夜中に何度か起きた。持っていた寝袋を出してその中に包まると、何とか眠りに就くことが出来た。

 朝になってガヤ駅に到着する前に腹が下り、2回ほどトイレにいった。カルカッタから同行していた仲間も夜中は寒かったらしく、みんな体調が悪くなっていた。
 ブッダガヤのゲストハウスに到着後、体調はさらに悪くなりトイレの回数も次第に増え、終いには気持ち悪くなって嘔吐した。

 熱を測ると39度。2ヵ月程インドを旅してきたが、ここまで体調が悪くなったのは初めてだった。連れの女の子も体調が悪くなり、2人して一日中寝込む羽目になった。
 昨晩カルカッタの定食屋で、この女の子と一緒に飯を食べた。その時に店で出された水か食事が原因かもしれない。同行してきた奴の一人も以前に同じような症状になったらしく、その時は絶食して体調を治したというので、一日絶食することにした。

 翌日に下痢は治ったが、まだ熱がって体もだるい。泊まった宿の奥さんは日本人だったので、彼女に作ってもらったお粥を食べて体調も次第に回復。じっとしているのもつまらないので、病み上がりの体で宿の周りにある各国の仏教寺院を見に行った。

 ブッダガヤは仏陀が悟りを得た地なので、日本、ブータン、ミャンマー、タイ、チベット、中国など、アジア各国の寺院がここにある。国によって寺の外観や内観のデザインが違うのが興味深い。各国の寺と見比べてみても、日本寺は凄くシンプルだった。

 ブッダガヤがあるビハール州は、インドの中でも特に貧しいという。宿の周りの集落を見ていても、その事を強く感じた。
 この町に住む人々は全員仏教徒なのかと思っていたが、どうやらそれは宿周辺の集落に住む一部の者だけだった。カーストにも属さないアンタッチャブル(不可触民)たちが、ヒンドゥーから仏教へ改宗しているのだろう。

 町の中央にあるマーハボーディー寺院には大きな菩提樹がある。ここは仏陀が悟りを開いた場所。菩提樹の横には台座があり周りには柵がされ、直接木に触れることも、台座に触れることも出来ないようになっていた。

 宿の奥さんの話によると、オウム真理教の教団代表だった麻原彰晃こと松本智津夫がここにやって来た時、その菩提樹の柵を乗り越えて台座に座り、自分も悟りを得たなどと言ったらしい。
 ブッダガヤ中の住民がこの行動に激怒して、大問題になったという。当たり前の話である。どんな偉い坊さんだって、誰だってそんな事はしないだろう。

 仏教の開祖の仏陀が悟りを開いたブッダガヤ。私は前日ひどい下痢だったので、宿で数え切れないほどトイレに行った。便座の上で何度も肛門を開いた私は、便とは何かという悟りを得ることが出来たような気がする。




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