本当の聖者 (プッタパルティー) 2003年2月24日〜25日


 日本でも有名なサイババが見られるということで、ハンピからプッタパルティーまでやって来た。信仰心などはまったくなく、目的はサイババを見ることだけ。手から物を出す不思議な現象も見てみたく、運がよければ何か貰えるだろう程度に考えていた。

 町には至る所にサイババの写真が貼ってあり、小さい田舎町だが空港や駅、学校や病院など全て揃っていた。これらは全てサイババの資金力によるものらしい。
 彼が住むアシュラム(修行道場)はバスターミナルの目の前で、施設内には信者用の宿があり観光客も宿泊が可能。

 様々なタイプの宿があったが、選んだのは一番安いドミトリー。といっても、それは体育館ほどの広さがあるものだった。泊まっていたのは数えられる程度の人数だったので、なおさらその広さを感じた。何かのイベントの時はここも満室になるのだろう。

 サイババは施設内にある聖堂に、早朝と昼の1日2回登場する。入場制限があるので前方で見たい場合は、3時間前から並ぶ必要があると旅人に聞いていたので、翌朝は早起きして行列に並んだ。
 その努力が実り、前から20列目ほどを確保した。周りにいるほとんど者が、白い衣装に身を包んだ信者たち。誰もがサイババの登場を今か今かと待っていた。

 昨晩ほとんど寝てなかった私は、その間にうたた寝をしていた。やがてざわめきが起こったので目を覚ますと鐘やお経が聞こえ始め、遂に主役であるサイババが登場した。
 待ち望んでいた連中は歓喜の声を上げ、手をかざしたり拝んだりしている。私の前に座っていた男などは、感動のあまり涙を流していた。

 サイババは前列にいる数人の前で、握った拳の中から何かを出していた。はっきりと確認出来る距離ではなかったので、それが何かは分からなかった。
 どういった基準なのか、前列の者たちの中から数人が選ばれた。彼等はサイババと共にステージの奥へ消え、そしてショーは幕を閉じた。

 目的はサイババだけだったので昼にはチェックアウトし、バスを待つ間に定食屋に昼飯を食べに行った。店内の壁に貼ってあるサイババのポスターを見ながら、私はこの町こに来てから感じていた疑問を店員に聞いてみた。
「サイババって一体何者なの」
その質問に店員は真顔で「神だ」と答えた。

 次の町へ行くバスをターミナルのベンチで待っていると、同じようにバスを待っていた一人の子供が私の所にやって来た。英語で話してくるわけでもなく、ただ単に珍しそうに外人の私を眺めている。

 いくらか覚えた現地の言葉を使ってコミュ二ケートを試みが、私のヴォキャブラリーは乏しく、おまけに通じていない。すると子供はポケットからアメ玉を出して私にくれた。ありがとうと言って受け取ると、ただ笑って家族の元へと戻っていった。

 プッタパルティーでサイババは聖者である。その存在は信者たちの心の支えになり、団体が共存のシステムになってるのだろう。
 しかし、何ら関係のない観光客の私には、サイババは単なる有名人。手から何かを出す彼よりも、アメ玉を差し出してくれた子供の方が遥かに聖者に感じた。




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