三原山トレッキング 2009年6月24日


 昨日は天気が悪く雨。今回の旅の目的である青ヶ島へ渡りたかったが、波が荒れてフェリーは欠航。結局どこへも行けず、一日テントで過ごす羽目に。

 天気の回復を期待したが、今日も雨で風も強い。原因は梅雨だけでなく、台風3号の影響で発生した梅雨前線が伊豆諸島に停滞していたことだった。
 大体、梅は松竹梅でも最下位。おまけに梅毒という病気もあるし、食べても酸っぱくて口がとんがるという悪いイメージばかりだ。

 予報ではこの先の数日間もこんな天気との事。青ヶ島への就航率は6割なので、この天候じゃまず船は出ないだろう。
 その予想通りに今日もフェリーは欠航。もう青ヶ島は諦めて都内に戻ろうと決意すれば、東京行きのフェリーまでが高波のため欠航。

 さらに、この日は飛行機までもが悪天候で欠航していた。もはや島から脱出する術はなく、太平洋に浮かぶこの孤島に軟禁状態。
 さすがに今日もテントの中で読書だけというのは苦痛なので、雨ニモマケズトとトレッキングに出掛けることにした。

 向かったのは島の南側にある標高700mの三原山。八丈富士よりも形成が古いこの山は植物も豊富で、歩くならこっちの方が面白いと地元の人間が言っていた。
 三原山の麓に向かう途中、壊れた車や冷蔵庫、洗濯機といった大型の家電製品が不法投棄されている場所があり、禁止を促す看板が立てられたいた。

 そういえば島に着いた初日に訪れた南原千畳岩海岸の近くにも、テレビが捨てられていた。離島という立地だけに、こういうゴミを簡単に始末できないという問題もあるのだろう。
 人里から離れた辺りには火葬場もあった。やはり死というものは見えない場所に追いやりたい、というのが人間の心情だろうか。

 大雑把な観光地図で三原山の山道と思われる道に入っていったのだが、これが見当違いだった。辺りが畑だったその道は次第に竹薮になり、覆われたシダと熊笹を掻き分けて進む状況に。

 もはや道などなく、出てきたのは急斜面。雨で足元がぬかるむ斜面を登りながら、コンパスを頼りにとにかく南へと進んでいくこと30分。どうにか林道に出ることが出来た。こういうのが本当の山登りなのだろう。

 抜け出た林道は形状から登龍峠と平行する道だと分かった。この林道は狭く車も走ってない。おまけに風がもの凄く強く、辺りは霧で覆われている。木々を大きく揺らしながら風が正面から向かってくるのをはっきりと感じた時、初めて風というものに恐怖を感じた。

 三原山トレッキングの目的は、ポットホールという自然の観光ポイントを見るため。山頂からポットホールまでは散策路があり、そこを歩けば末吉地区まで抜けれるルートだった。
 散策路は手付かずの自然で草木が生え放題の為、掻き分けて進まなければならない箇所も多々あった。八丈富士の時と同様に三原山の山頂も霧一面。こんな時に山を歩いている者など一人もいない。しかし、私にはそれが刺激になっていた。

 数日前に島を散策している時に、「キノコバスターミナル」という変わった看板を目撃した。一体これは何だろうと地元民に聞いたところ、島には夜になると光るキノコが生えているという。
 そのバスターミナルの周りに光るキノコが生えてるのかと思ったが、看板の場所は光るキノコを見に行くツアーバスが発着するというだけだった。

 キノコが生えてる場所がどこなのか役場でも聞いたのだが、説明するのは難しいので直接ツアー会社に電話してくれと言われ、行くのを諦めた。
 歩いていたポットホール散策路には、所々にキノコが生えていた。もしやこれが噂の光るキノコではないかと手をかざして暗闇にしてみたが、どれ一つと光るものはなかった。

 草木の茂る散策路だったが、途中からは丸太の階段道に変わりポットホールに到着した。ここは岩の窪みを水が流れるときに、小石が窪みを削って穴を広げていくことから出来た、段になった滝のようなもの。

 ポットホールが連なる沢は沿って歩けるようになっていた。アングルの良い写真を撮ろうと、苔むしたポットホールを歩いていると足が滑って豪快に転び、背中から尻までびしょ濡れになってしまった。

 末吉地区の林道に出るとバス停があり、20分待つだけでバスに乗ることが出来た。それを逃すと次は2時間後だったので、タイミングが良かった。
 バスの乗客は僅か5人程で全員婆ちゃん。本数の少ないバスは、老人たちの貴重な足なのだろう。歩き疲れた私も自分の足を貴重にしようと、テントに戻るなり焼酎を飲んで清めの儀式を行った。




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