八丈島に到着して落ち着いたのが昼頃。天気も良いのですぐに観光へ繰り出すことにした。選択肢は二つ。八丈富士へトレッキングに行くか、自転車で島を一周するかだ。
地元民に聞くと八丈富士登山は一日がかりが普通で、半日じゃ戻ってこれないという。島一周は約60kmなので、こっちなら今から出ても十分回れる。八丈富士は後日にし、底土キャンプ場から北上して、時計の反対回りで島一周サイクリングを始めた。
キャンプ場からフェリーが到着した八重根港までの北半分は、民家などまったくない自然な景色が溢れていた。見掛けたものといえば、島名産のくさやの店と、潰れた洋館風のホテルやペンション。
八丈島も一昔前はかなり観光客が押し寄せてきたのだろうが、現在はそれ程でもないことを潰れた建物が物語ってる。
暖かい地域特有のアロエ園や灯台などもあった。地元の車もまったく走ってなく、天気は快晴。まさにサイクリングにもってこいの条件だった。
八重根港の手前には、八丈富士の噴火によって出来た奇岩の南原千畳岩海岸があった。黒っぽい千畳岩には亀裂や凹凸があり、でかい岩も転がっていた。
岩の模様からも、向かいにそびえたたつ八丈富士から流れてきた事がはっきり分かる。自然の力というもの凄いものだ。
近くには雛人形の様な形をした、宇喜多秀家公と豪姫の石像があった。この宇喜多秀家とは、慶長11年(1606年)に公式な流人第一号として八丈島に送られた者だという。
南側半分は北側とは対照的に、民家や見所も多かった。一つは歴史民俗資料館の近くにある大里集落の玉石垣。
長い間波にもまれて丸くなった玉石を積んで作った石垣の一画は、まるで東南アジアの国にでもいる異国情緒があった。石垣を作るのに使われたのは流人たち。石一個運んでおむすび一個の報酬だったという。
樫立では自転車を置き、エメラルド色をするという硫黄沼まで歩いた。往復1時間半の山道では誰ともすれ違わず、自然を独占してるような気分に。
さらに走った中之郷では裏見ヶ滝へ。ここは名の通り落ちている滝を裏から見ることができるという滝。
ジャングルのような周辺の森もなかなかだった。近くには無料の混浴風呂の裏見ヶ滝温泉もあったので、一汗流したかったが、また自転車で走ればすぐに汗が吹き出るので止めといた。
末吉から底土キャンプ場までは峠道で、島一周で一番きつい場所だった。既に体力は消耗し足もパンパン。7km程の登龍峠は自転車を押しながら上がった。途中には峠の名前でもある龍が描かれた壁などもあった。
標高が上がるにつれて霧がかり、気温も低下。一周の達成感と勝利のビールの事を考え、どうにか峠を登りきった。登龍峠展望台からの島の景色と、そこからのダウンヒルは最高だった。テントに戻って飲んだビールも格別な味だった。