都での意外な発見 (北京) 2009年8月31日〜9月3日


 鄭州からのバスが北京で到着したのは、六里橋長距離バスターミナル。私は市内中心部には向かわず次の移動を考えて、そこから趙公口バスターミナルに移動した。
 上海駅北口では安宿探しに苦労したが、この趙公口バスターミナル周辺では、それを上回る程に大変だった。

 十数件の宿に足を運んでだが全て宿泊拒否。どこも50元が相場で安かったのに残念だ。どの宿の人間も決まって口にしたのが、「〜ホテルに行け」ということ。最後にその宿に行ってみたが、シングルで250元とバカ高い料金。
 今まで飛び込みで安宿を見つけてきたが、この北京だけはガイドブックに頼り、南鑼鼓巷に移動して宿を見つけた。

 中国といえば思い浮かぶのは、やはり地上最大の人工建築物である万里の長城だろう。総延長距離が6000kmを超えるこの建築物は、異民族や隣国の襲来を防ぐために作られた土壁だ。
 観光出来るポイントはいくつかあるようだが、八達嶺長城へのアクセスが一番便利だったのでそこを訪れることにした。

 雲南省から北京までの一ヶ月間はほとんど雨には降られず、天気には恵まれていた。しかし、この日は運が悪く、曇り空で雨模様。長城がある山は霧がかり、壮大な景色は隠れてしまっていた。

 おまけにTシャツと短パンで訪れた私にはかなり寒い気温で、急斜面の長城を上るのが体を温めるのに丁度いい運動だった。それにしてもよくもまあこんな物を作ったものだ。このエリアだけでも凄いのに、これが6000kmも続いているのだから。

 万里の長城は宇宙から見える唯一の人工建築物。これを耳にしたことがある人も多いだろう。私もその一人だった。だが、実際は宇宙から肉眼で確認するのは難しいようだ。
 中国では数年前に、宇宙船で初飛行した飛行士が「万里の長城は見えなかった」と発言し、小学校の教科書が書き換えになる大問題にもなったという。

 だが、その後に国際宇宙ステーションから撮影された写真では、万里の長城がしっかり写っていたようだ。この時に見えた理由は、晴れた日で撮影日前に雪が降った、などの様々な条件が揃っていたからだという。

 周囲の色や状態と非常に似ている建築物は、肉眼での認識はやはり難しいようだ。万里の長城でなくても、港湾や空港など周囲の風景から際立った人工的な構造物は、宇宙からよく見えるらしい。

 雲南省からここまで旅をしてきた私には、北京がこの国の都だということを強く感じた。碁盤の目に広がった道路は車線が多く、建物も大きなものが目に付く。
 地下鉄に乗るには荷物や所持品のセキリティチェックがあり、天安門広場に入るにはさらに厳重なチェックがあった。私が泊まっていた南鑼鼓巷のエリアでは、夜になると数人の警察が巡回していたくらいだ。

 そのエリアや近くの鐘楼・鼓楼のエリアは古い町並みが残り、都会の中でも落ち着ける場所だった。かつては1日に2回、太鼓を打ち鳴らし角笛を吹いて人々に時を知らせていた鼓楼には、当時使われていた太鼓が残っていた。

 そこでは30分毎に太鼓ショーが行われていた。入場料の20元を払ってそのショーを見てみれば、たったの5分で終わるもの。おまけに演者はやる気がなく、リズムもたまにズレたりしていた。

 北京観光の最後には景山公園を訪れた。故宮の北にある公園には景山という人工の築山があり、山頂からは故宮や北京市内が一望できる。
 景色は素晴らしいものだったが、それよりも目に残ったものがある。それは、山頂の小屋に安置されていた大きな仏像だ。

 神様がいないと思っていた中国の首都では、なんとブッダが故宮や天安門を見下ろしていたのだ。八達嶺で壮大な長城の景色が見れなったが、景山の頂上では意外なものが見れた。これは中国旅の最後を締めくくるにも相応しい景色だった。




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