赤色がトレードマーク (大理) 2009年8月4日〜6日


 昆明からは西に向かい、大理、麗江などの古い町並みが残る都市を訪れて、また昆明に戻ってくる予定でいた。
 私は1日置きで移動していたのでそれらの観光は3,4日あれば十分なのだが、昆明に戻るのは早くても一週間後でよかった。

 それは、日本から送られてくるカメラを、昆明で受け取るという用件が生まれたからだ。それまで昆明を離れられないし、ここまで休むことなく連日移動をしてきたので、その二つの町で息抜きも兼ねてのんびりすることにした。

 まず訪れたのはペー族が自治する大理。かつて大理国が築かれたこの土地には伝統文化も色濃く残り、使用言語もペー語が使われている。ペー族は白色を最も貴い色としているので、民族衣装も白がベース。漢字で書くと白族ともなる徹底振りだ。

 大理は古城エリアと下関という二つの中心があるが、観光客が向かうのは古城エリアの方。その古城エリアは多くの観光客で賑わっていた。
 民族衣装を着た人々が普通に生活している姿はなかったが、観光客向けのショーか何かの為か、白ベースの民族衣装に赤や緑の上着を着た女たちが通りの一部でたむろしていた。

 繁華街である洋人街にはオープンカフェやレストランが並び、店からは洋楽が流れている。こういう景色はどこの観光地でも見られることだが、この大理ではそれがまったく似合わないように思えた。

 西門から城壁の外に出てみると、遠くに大理のシンボルである高くそびえた仏塔が見えた。仏塔は3本あり、中央の主塔の高さは69m。その為、わざわざ高い入場料を払わなくても、入口の前から十分に見る事が出来る。 塔の後ろには山がそびえていた。

 この時は雨で曇っていたので山の姿は見えなかったが、天気が良ければそこには万年雪を戴いた標高4122mの蒼山が見えるらしい。その雄大な景色が拝めなかったのが残念だった。

 古城エリアに戻って散策していると、赤くて小さい辞書のような本が並べられた屋台があった。何だろうと手にしてみると、それは毛沢東語録だった。これは文化大革命の象徴となった本で、当時は市民が常に携帯していたマオイズムのバイブル。

 並べられていた語録には中国語をはじめ、ロシア語、英語など、何ヶ国かの翻訳版があり、当時の物と思える古いものから新品同様のものまで売られていた。
 新品があるということは、土産物として刷られているのだろうか。語録の他にも、毛沢東バッジ、シガーケース、目覚まし時計といった様々な毛沢東グッズが売られていた。

 町の通りにはペー族料理の鍋を食べれる店も多くあり、店頭には色とりどりの野菜が並んでいた。そこから自分で具財を選ぶというシステムのようだ。
 晩飯にその鍋を食べたかったが風邪を引いてたので食欲があまりなく、屋台で焼き鳥やポテトフライを買って宿に戻った。

 どちらも唐辛子が振りかけられていたので、ピリ辛の味で酒のつまみに丁度良いだろうと思ったが、食べてみると唐辛子の味しかしなく不味い。辛すぎて本来の肉や芋の味がまったく消えてしまっているのだ。タイからここまで色々な物を口にしてきたが、これはその中でも最悪の食べ物だった。

 昨晩はそんな夕食で苦い思いをしたので、それを覆そうと今晩はペー族の鍋料理を食べることにした。店頭に書かれたメニューには砂鍋、魚鍋などが目立つ。料金を聞いてみると2、30元とやや高い。

 どこかに安い店があるだろうと他を探すと、北門の近くに鍋鍋菜1〜3人前が8元という店があった。そこで鍋鍋菜を頼むと、清湯か麻辣鍋のどちらかを選べと言われた。
 ちょうど両方を食べている客がいたので見てみると、清湯の方は字の通りあっさりそうな白いスープ、麻辣鍋は見るからに辛そうな真っ赤なスープだった。昨晩のトラウマがあるので、迷うことなく清湯を選んだ。

 料金からいって野菜が3、4種類入ってるだけのシンプルな鍋かと想像していたが、出てきた鍋にはあらゆる具が入っていた。
 それは、白菜、葱、キノコ、人参、ほうれん草、蓮根、ブロッコリー、かいわれ、きくらげ、かぼちゃ、ズッキーニ、トマト、揚げ豆腐、芋、ソーセージ、餅、レバー、マロニーちゃんみたいなものと、まさに盛沢山。味もあっさりしていて抜群に旨い。量もかなり多く、1人前というより3人前といったものだった。

 今までシンプルな野菜を食べれる機会があまりなかった。これだけの量を食べて栄養を摂れば、元陽から続いてる風邪も治りそうだ。昨日はこの旅で一番最悪な食事だったが、今夜は最高の食事になり、心身ともに満腹になることができた。
 昨晩は早々宿に戻ったので気が付かなかったが、夜の古城エリアはライトアップされ、昼間とはまた一味違う良さが。食事と同様に夜の町の風景でも満腹になった。

 大理は白を貴ぶペー族が暮らすところだったが、私が目にしたのは、赤くライトアップされた夜の五華楼、屋台に並んでいた赤表紙の毛沢東語録、赤の上着が目立つ民族衣装の女たち、そして唐辛子たっぷりの屋台の食い物と、どこを見渡しても赤一辺倒。白というよりも、赤色がトレードマークに思えた大理だった。




Copyright (C) 2019 諸行無常 All Rights Reserved