捻り出した対策 (昆明) 2009年8月2日〜4日


 元陽から昆明行きのバスは9時発で、それを逃すと次は夕方。観光拠点である新街にいるなら時間の余裕はあるが、私が今いるのは牛角寨。そのバスに間に合うには、牛角寨を7時に出るのがデッドライン。

 そこで朝一でミニバンに乗り、朝靄がかかる棚田を眺めながら新街へ。こちらが急いでるのとは裏腹に、運転手の姉ちゃんは途中で車を止めて呑気に洗車なんかしてる。新街の宿に戻ったのは8時半だった。

 急いでチェックアウトしてミニバスが集まる場所で「昆明、昆明」と聞きまわった。私はバスがどこから出発するのか知らないのだ。
 その言葉を聞いた店のおばちゃんが理解してくれ「これに乗って行きなさい」とミニバスの運ちゃんに行き先を告げてくれた。それに乗っていくと3km程走った所にバスターミナルがあり、出発10分前に滑り込みセーフで到着できた。

 1週間ほど山中の町にいたので、次に訪れた昆明の町は大都会に感じた。信号や渋滞を目にするのも久し振りだった。
 昆明バスターミナル周辺で安宿を探しがどこも相場は50元で、20,30元の安い宿は全部満室。さらに探し回ると裏路地に招待所がいくつもあり、20元の部屋が空いていた。チェックインのため身分証のパスポートを出すと「日本人か」と宿泊を拒否。その後も3軒ほど断られた。

 この宿泊拒否は噂には聞いていたが、実際やられるとムカッとくる。別に日本人だから拒否されてるのではなく、外人を泊めてはいけない決まりのようだ。
 金を持っている外人は料金の高い宿に泊まれということらしい。その後どうにか40元の宿を見つけて落ち着くことが出来た。

 宿の次に今の私が確保したいのはデジカメの電池。これがなかったばかりに元陽の棚田は幻想になったのだ。予備も含めていくつかの電池を購入して早く安心したい。
 宿の受付で電気屋の場所を聞くと、「国美電気」という大型電気店を教えてくれたので、すぐに行ってみた。

 ようやく写真が撮れるようになるぞと思ったが、店には私が必要とするCR−V3というデジカメ専用電池がひとつも売ってない。CR−V1やCR−V2といったタイプは売ってるのだが、肝心のCR−V3がない。
 店員に実物を見せてみたが、こんなものは見たことないという顔をして「メイヨー」と一言であしらわれた。

 この店では扱ってないのだろうと考え、さらに他の店を何軒も回ってみたが、やはりどこにも置いてない。
 高度成長が続く中でオリンピックも開催され、コピーもんだって平気で出回るこの中国で、なぜこのCR−V3を使用するカメラがないんだ。都会の昆明でないということは、もう他の町に行ってもないだろう。

 新しいデジカメを買う手段もあるが、日本で安く買えるのにわざわざ高い金を出して買うのも癪。フィルム使用のカメラが100元で売ってたので、それで急場を凌ぐ手段もあるが、フィルム代や現像代を考えると新しいのが買える。いっそのこと、この旅で写真を撮るのはもう諦めるか。
 太陽も気分も沈み暗くなったので宿に戻り、米酒を飲みながら、3つの選択肢からどれを選ぶか悩んだ。

 どうするかを決められぬまま翌朝を向かえた。朝飯を食おうと外へ出ると、宿の前に郵便局があるのに気付き、思わぬアイデアが閃いた。
「郵便局留めで日本からカメラが送れないだろいうか」

 私は単三電池を使用するカメラも持っている。最初からそれを持ってきてればこんな事態にならずに済んだのだが。
 ともかく急遽増えたこの4つ目の手段が選べれば、新しいカメラを買う必要もなく、出費は送料代だけで済む。太陽が昇ると同時に、私の中にもフラッシュの光が見え出した。

 その手段が可能であるかを確認しに、開店と同時に郵便局へ。受付の係員に英語が話せるか聞くと「YES」。局留めで小包が送れるかとの質問にも「YES」。私も思わず「YES!」とガッツポーズを決めて、救世主にも見えた係りの女の子を写真でバシバシ撮りたい気分だった。

 全ての答えが「YES」の中で一つだけ「NO」だったのは、荷物はここには届かないということ。国際郵便は北京路にある支店が扱っているという。
 住所を聞いたのでそちらを訪れ、念のためにもう一度確認して「YES」を聞いた。その後すぐに家巣である実家に国際電話をして、カメラを送ってもらうよう頼んだ。

 カメラが届くまでに1週間かかるので、その間はフィルムカメラで急場を凌ぐしかない。それを買おうと店に向かう途中、まだ覗いていないカメラ店があるのに気が付いた。
 もはや何の期待もなく確認のためだけに店に入ると、なんとそこにCR−V3の電池が売っていた。

 しかし、その料金は135元で、フィルムとカメラを買う出費と同じ。1週間後には単三電池使用のカメラが届くし、節約すればこの電池一つでその間は持つ。躊躇することなくこの店でCR−V3を購入。

 ようやくカメラ問題に終止符が打てたので、世界遺産の石林を観光しに行き、そこで写真をバシバシと撮りまくった。尖がった岩が並ぶ石林の風景は印象的なものだったが、観光客が多すぎて、石林というよりも人林と言った方が相応しい状況だった。




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