煩悩を鎮める (佐賀〜福岡) 2011年11月25日


 今日は最終日で、福岡県に残った17ヶ所の寺を巡るラストスパート。まずは虹の松原を出発して国道202号線を進んで福岡県に入り、糸島市で82番千如寺に到着した。

 本堂の写真を撮りろうとすると寺が開いてない。なんとこの寺の営業は9時から16時半で、しかも400円の入場料が必要だった。
 ここは紅葉の名所で、境内には樹齢600年の楓の木があった。その事が商売にしてる理由だろう。後にも先にも金を取るのはこの寺だけ。バカらしくなったので、中には入らず立ち去った。

 東へ向かいながら巡った寺もクセがあった。83番誓願寺は看板がなし。84番法蔵院は商店街の中の民家。85番観音寺の入口は愛宕神社。九州八十八ヶ所の寺は本当に変わったものが多い。

 その後、博多まで走り、本来のスタート地点である1番東長寺を参拝。さすがにこの寺は博多駅の近くという立地や、日本一の木造坐像である福岡大仏があったので、外人なども含めた参拝客が多くいた。
 福岡大仏を見るのも寺に入るのも無料。こういうのを知ると、楓を見るために400円払わなければならない寺が、なおさら理解出来なかった。

 博多といえば有名なのはとんこつラーメン。これは食べていかなければならぬと、市内中心部で2番般若院を参拝し、次の寺に向かいながらラーメン屋を探していると、県道31号線で「三気」という店を発見した。

 このラーメン屋は「ラーメンWalker」というサイトで上位に選ばれる人気店だった。しかも、替え玉が何玉でも10円という太っ腹のサービス。ラーメン自体の料金が高いんじゃないかと店に入ったが、料金は550円とリーズナブル。ラー麦100%使用の麺やスープの味はもちろん格別だった。
 ちょうど3周年記念で、客はくじを引く事が出来た。私はなんと1杯無料券の当たり。だが使える機会はもうないので隣の客に譲った。

 今日は巡る寺も多く時間もあまりないので、ペースを上げて移動していく。宇美町で8番隆照寺、篠栗町で9番明王院を参拝。明王院には滝があり雰囲気があった。ここもそうだったが、寺に鳥居がある神仏習合が八十八ヶ所には多い。
 その後、飯塚市に移動して12番金倉寺、11番明観寺、13番法善寺を参拝。国道200号線で北上して、直方市で14番東蓮寺、16番善覚寺と巡った。

 16番に到着した時点で既に16時半。残すはあと3ヶ所だが、次の寺までは20km。日が沈むまであと30分しかない。
 今までの寺は全て日没前に訪れていたが、最後はもう無理だろう。昨日、観光に時間を掛けず先へ移動していたら、もう少し余裕があった思う。

 四国もそうだが八十八ヶ所巡りには巻物があり、各寺で納経代を納めればそれにスタンプを押してもらえる。たしか納経は17時までだったと思う。スタンプラリーを私はやってないので関係ないが、寺を訪れるのは17時までというルールを自分で作っていた。

 まあ全てを巡れば何も問題はない。宗像市に移動して87番宗像観音寺を参拝。完全に日が沈んだ福津市で86番海心寺を参拝。そして宗像市に戻り、宗像大社近くの88番鎮国寺を参拝して八十八ヶ所巡りを終えた。
 最後の鎮国寺にはもはや誰もおらず、灯りも僅かしかなく真っ暗だった。それは、マイナーだったこの八十八ヶ所巡りの終わりにふさわしい状況でもあった。

 寺巡りは終了したが一周はまだ終わってない。ここから小倉駅まで戻って旅は完結する。ラストランは国道3号線を42km走り、何事もなく20時に小倉駅へ到着。
 予約していたホテルにチェックインした時は、「やっと終わった。もう寒い思いをしなくて済む」というのが一番の感想だった。

 父親と合流するのは翌日だったので、日程も見事にぴったりだった。九州一周は1500km位と大雑把に計算していたが、実際は約2400km。東京からの合計走行距離は約4000kmにもなる。まあよく走ったもんだ。バイクが壊れなったのが何よりだ。

 仏教の教義では、人間には108の煩悩があるとされている。除夜の鐘を108回叩くのも煩悩を滅するためだ。八十八ヶ所巡りでは、寺を巡ることによって煩悩を除き、その分の功徳を積むことが出来ると言われている。

 だが、私の煩悩はそう簡単に消えることはない。それに、あるものも溜まってきている。これを鎮めるには遊びしかない。そう考えた私はホテルの部屋を出て、ネオンが煌く小倉の街へと下山した。

[この日の写真]




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