終章 自然への回帰 (福岡〜静岡) 2011年11月27日〜29日


 八十八ヶ所巡りを終えた翌日、小倉駅前のレンタカー店にバイクを預け、車に乗り換えて父親と合流。当初の目的だった山口県の笠戸島へ向かい、湯田温泉や萩の町を観光して2日後の夕方に小倉へ戻った。
 父親は飛行機で帰って行ったが、私はバイクなので帰りはフェリーを利用。門司港からは東京行きのフェリーがあるので、一気に近くまで帰れる。

 調べていたフェリーの出発時間は19時。レンタカーを返してギリギリ10分前に港に到着したが、フェリーの姿がどこにもなかった。
 後で知ったのだが、東京行きの出発時間は曜日によって変更し、この日は1時間前の18時が出発だったのだ。

 門司港からは東京行きだけでなく、大阪行きのフェリーも出航していた。こちらの出発は19時半だったので、間に合わなかった時は大阪行きの乗ろうと考えていた。
 どこかでキャンプして明日まで待つ方法もあったが、丸一日待つのは面倒なので、大阪行きに乗って行く事にした。

 翌朝に到着した大阪南港から再びバイクで出発。計算では3日で神奈川に帰る事が出来る。通天閣や道頓堀を観光して大阪中心部を抜けた後、国道1号線で京都へは北上せず、国道307号線を走って茶で有名な宇治を抜けていった。

 滋賀に入ってタヌキの焼物で有名な信楽を観光。その先の甲賀町で忍術村を訪れたが、休日か閉鎖かで閉まっていた。
 林道を走りながら山を抜け、行きによった東海道の関宿へ出た。ここから1号線でひたすら神奈川を目指していく。この日は愛知の木曽川まで走り、川でキャンプした。

 翌日も1号線を走り、東へ東へと進む。東京を出発してから今日まで、単純に計算しても既に4000kmは走ってるだろう。そろそろオイル交換が必要なので、家に帰ったら交換しようと考えた。

 愛知から静岡に入り神奈川にも近付いたところで、エンジンが急に止まってしまった。ガソリンはあるのでガス欠ではない。
 このスーパーカブは中古で買った年代物で、信号待ちなどのアイドリング中に時々エンジンが止まる事があった。しかし、今回は止まったのは走ってる最中。不安がよぎったが、何度かキックをしてるとエンジンが掛かった。

 だが、安堵したのはほんのつかの間。100mも走らぬうちに、今度は変な音を立てながらエンジンがストップ。そして、ギアが動かなくなってしまった。これはただ事ではない。素人でも分かる完全な故障だ。

 バイクが止まってしまったのは、静岡県磐田市の国道152号線のバイパス。バイクを押しながら下の道へ降りると、横にJA遠州中央園芸センターがあった。その事務所で状況を説明し、近くにあるバイク店も教えてもらった。

 電話で故障したいきさつや状態を話すと、どうやら原因はエンジンのオーバーヒート。修理は可能だが、その費用は新しく中古を買える料金になる。それを聞いてもう復活の望みはないと諦めた。

 バイクを捨てて帰るわけにもいかないので、ここまで家族に車で迎えに来てもらった。そして、軽自動車にバイクを詰め込み、自宅へと戻って旅は終了した。
 ゴールを目前にして、こんな結末になるとは予想もしなかった。バイクは故障してしまったが、東海道と西国街道、九州八十八ヶ所巡りに奄美大島一周と、旅の目的は全て果たせたので結果はオーライだろう。

 移動した総距離は約4530kmで、使用したガソリンは約105リッター。噂には聞いていたが、スーパーカブの燃費が本当に良い。この計算でもリッター40kmは走ってることになる。そんな相棒が壊れてしまったのは非常に残念だ。

 後に詳しく調べた結果、バイクの故障原因はオイル切れによるオーバーヒート。1日前にでもオイル交換していれば、こんな事にはならなかったのだ。次の旅の相棒としても有望株だったが、修理には費用が掛かるので、結局バイクは廃車にして葬った。

 壊れた場所は園芸センターの近くだった。私はバイクで家に帰りたかったが、相棒のブラザーカブは、ただの「かぶ」となって自然に帰りたかったのだろう。

[この日の写真]


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