有田のちゃわん祭り (佐賀〜長崎) 2011年11月23日


 北方運動公園を出発し、近くの61番高野寺へすぐ着いた。寺に参拝客や住職が居ないことはすっかり慣れていたが、何とここは寺自体が閉まっているという有様。

 7時をちょっと過ぎたという時間は、郊外に住むサラリーマンだってもう電車に乗ってる頃だ。これには「坊主ならもっと早起きせんかい!」とツッコミたくなった。九州八十八ヶ所はマイナーというよりも、やる気がないのかもしれない。

 国道35号線で西へ進み、同じ武雄市で67番東光寺を参拝。その先の県道26号線で、「腰骨を立てよう」という変な看板を見た。おそらく「背筋を伸ばそう」とか「姿勢を正そう」という意味なのだろうが、骨を立てるという表現は初めだ。
 私も腰の痛みが再発しないように腰骨を立てながらバイクを走らせ、近くの68番無動院を参拝。次の69番西光密寺は黒髪山の山頂付近だが、車でも行く事が出来る。

 寺からは山頂を踏破しようと歩いたが、これが凄い道だった。山頂は大きな岩になっており、ほぼ垂直のような斜面を、鎖と足場を使いながら登っていくのだ。しかも、小雨が降っていたので滑りやすく危険だった。山頂からの景色は良かったが、この時は雲がかかってイマイチだった。

 山を下って焼物で有名な有田町へ行き、70番宝光院を参拝。周辺の道路では「有田のちゃわん祭り」という立て看板を頻繁に見た。
 数日間行われているこの祭りは、勤労感謝の日の今日が最終日。これは面白そうだと看板に従って走っていくと、祭り会場は焼物会社の問屋が集まる有田焼卸売り団地だった。

 店頭には安売りの碗や皿などが並べられ、けっこうな人が訪れていた。会場の中央では餅つきが行われるところで、女性の司会者が協力者を募っていた。真っ先に手を上げた私が一番手で餅をつくことになり、終わった後は軽いインタビューも受けた。

 老若男女が叩いていたが、中には100歳になる婆さんもいた。祭りの様子は地方局と思われるテレビカメラが撮影していたので、どこかで映ったかもしれない。つきたての餅は誰でも食べれたが、叩いた人間は優先的に貰う事ができた。

 餅つきの後には、有田出身の女性演歌歌手によるコンサートもあった。名前は忘れてしまったが、有田とか伊万里とかが付いていた記憶がある。ゆっくりしてる時間がないので歌は聞かず、グラスを一つ買って出発した。

 県道4号線を南に下って長崎県に入り、波佐見町で66番東前寺を参拝。その後、県道1号線で佐世保市に入って71番浄漸寺、72番光輪院を参拝した。
 佐世保といえば知ってたのは佐世保バーガー。食べた事がないので本場なら安く売ってるかもと、させぼ四ヶ町というアーケード商店街を散策してみた。

 佐世保は海軍があるのだろう、町にはやけに外人の姿があった。目当てのハンバーガーショップは一軒だけあったが、料金が5,600円と高いので止めた。
 そんな金を払うなら、マクドナルドでマックチキンを5個買ったほうがトクだ。こういう勘定は物価の安いアジア各国を旅している内に、身に付いてしまったクセである。

 佐世保の中心部を離れ、郊外で73番西光寺、74番東漸寺、76番西福寺、75番御橋観音寺と巡っていった。75番御橋観音寺には巨大な2枚の岩が橋のようになっている「大石橋」があり、その下で手を叩いてる人がいた。岩の関係で音がけっこう反響する。その人に聞いた話では、この反響を宗教儀式に利用してたのではないかとのことだった。

 その後、国道204号線に出て北上し、平戸大橋を渡って平戸島に渡る。橋を渡ったところに公園があったが日没までまだ30分あったので、近くの77番最教寺奥之院を参拝し、北上して田の浦へ向かった。

 地図上にはビーチがあったのだが、海岸に出ても防波堤のようなところばかり。周囲に民家はなくほとんど森だったが、キャンプが出来るポイントがない。暗い中でウロウロしてると、巨大な石像がある駐車場を発見。地面はコンクリートだが東屋もトイレもあったので、ここに落ち着くことにした。

 風がもの凄く強く雨も降りそうだったので、テントを張るのは東屋の下がよかったが、そこだと風をもろに受けるし、通りからも丸見えになる。車はほとんど来ないが、1台パトカーが通り過ぎたのを見ていたので、視角になるトイレの横にテントを張った。

 酒を飲みながらラジオを聞いていると、立川談志が亡くなったとのニュースがあった。私が彼を知ったのは数年前で、東京MXテレビの「言いたい放題」という番組がきっかけだった。その毒舌が好きになって落語にも興味を覚え、独演会にも一度足を運んだ。

 談志師匠の十八番は「芝浜」という落語で、内容は酒を止めて改心する男の人情話。コンクリート浜で深酒をしながらその話を思い出した私は、「よしとこう、また夢になるといけねえ」と次の杯を止め、早々に眠ることにした。

[この日の写真]




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