運転医原だけ (熊本〜長崎) 2011年11月20日


 昨晩雨が降ってまたテントが濡れたので、風を利用して持ち物を乾かした後、海岸を出発して荒尾市内で58番金剛寺を参拝。
 順番通りの寺巡りならこのまま北上だが、私のルートは独自に考えたもの。ここからは南に戻り、長洲港からフェリーで長崎に渡る。

 このフェリーではカモメの餌用にかっぱえびせんが貰える、変わったサービスがあった。私は自分で食べてしまったが、多くの客は甲板でカモメにあげていた。
 フェリーでよく見るその風景よりも目を引いたのは、甲板の自動販売機で売られていたラーメンの缶詰。九州なのでやはり味はとんこつ。これは初めてみた。

 長崎の多比良港までは40分。天気は良かったが、甲板は風が強くて寒い。それでなくても今まで一番寒い日だった。だいぶ北上したので、南国の暖かさもなくなったようだ。
 多比良港から国道251号線を南下して島原へ。城も残る城下町は風情があったが、ここよりも見たいのは雲仙普賢岳。

 早くそれを眺めたいと国道57号線で山へ上がって行くと、右手にその姿が現れた。
 遠くからでも山頂部の爆発跡が分かり、ゴツゴツした山肌がはっきりと見えた。生々しい姿を目にすると、山が生きているという事がひしひしと伝わってくる。

 その先で64番龍照寺を参拝した後、近くにあった旧大野木小学校を見学。ここは雲仙普賢岳の噴火によって発生した、火砕流の熱風で被害を受けた校舎。当時の状態のままの建物は窓ガラスが割れ、パイプや天井なども溶けて変形したままだった。
 校舎はこのようになってしまったが、噴火する前にこの辺りは警戒地区に設定されていたので、児童や住民への人的被害はなかったという。

 隣に建つ砂防みらい館では、火山に関しての展示がされていた。建物の地下はシェルターの役割も担っていた。館内の展望台から見る雲仙普賢岳はさらに迫力が増し、火砕流の流れた跡もはっきりと分かった。
 その後にさらに山を上がって新山展望台からも眺めたが、そこからは火砕流が有明海の近くまで流れたことが見てとれた。自然の威力は計り知れないものだ。

 噴火前は普賢岳が最高峰だったが、現在は噴火によって生まれた平成新山が最高峰。だが、島原半島の中央部は分断された地溝帯になってる為、火山活動が休止期に入ると陥没し続ける地溝帯のなかに山体を沈めて行く。その速度は1000年に2mという。

 このような地形でなければ、富士山のように噴火を繰り返すたびに山は高くなるのだが、雲仙ではそれが出来ないようだ。地形が違えば普賢岳は、2000mを越える九州一の山になっていたという。

 湯煙が立つ雲仙温泉を抜けながら、国道57号線で山を下る。橘湾に出た後、農村景観百選の木指という集落を見に行った。山の麓にある茅葺屋根の集落を想像していたが、そこにあったのは見事な棚田。橘湾も同時に眺められるなかなかの風景だった。

 ここから国道251号線を30km走り、長崎市内で65番延命寺を参拝。寺は観光で有名な眼鏡橋の近くにあったが、半年前にも訪れていたので新鮮味はなかった。長崎観光はその時にしてるので、平和公園で一服してから寝床探しを始めた。

 国道206号線で市内を抜けて時津町まで行くと、崎野自然公園にキャンプ場があるという看板を発見。行ってみると料金は200円という安さだったが、このシーズンの利用は夕方18時までという変なキャンプ場でボツに。
 長与町の総合公園にも行ってみたが、落ち着けるポイントがなくてここもボツ。暗くなったので崎野自然公園に侵入しようと戻ったが、鎖が掛けられ侵入不可能に。

 もう山の中で空き地を探すしかないと、県道33号線で先へ進んだ。松峠まで走ると、トンネルの手前に琴尾展望公園の看板を発見。ここしかないと、外灯がない真っ暗な山道をひらすら上がっていった。
 到着した公園は夜景が綺麗な場所。バイクがかろうじて入れる駐車場上の公園に入ると、広々とした空き地があった。迷うことなくテントを広げ、すぐに横になって休んだ。

 今日は長距離移動が多くてかなり疲れた。バイクに乗っているだけの時間が増えると、体を動かさない事で体が鈍る上、同じ姿勢のままというのが腰の負担にもなる。
 椎間板がへたってる身なので腰は痛みやすいのだが、前途した原因のせいか、この旅の間は何度もプチギックリ腰になっている。今日もまた同様の痛みに襲われた。

 病気の一つに医原病というものがある。これは患者の誤解や自己暗示によって起こる疾患、医療行為が原因となって不可抗力的に発生する傷病のこと。
 例えば、薬を飲んで出てきた副作用の原因が薬だと思わず、病気が悪化したと勘違いする。そして、新たな症状の為にまた薬が処方され、悪循環に陥っていくことなどだ。

 私の場合はリフレッシュになるはずの旅で、バイクを運転して腰痛が悪化するという悪循環。これじゃ運転しても医原になるだけだろう。痛みが今日見た雲仙普賢岳のように爆発する前に、この先は腰のケアを入念にしなければならない。

[この日の写真]




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