王様に出会う (熊本) 2011年11月19日


 昨晩雨が一度止んだが、夜中からまた本降りに。小便で目を覚まし後に再び眠ろうとすると、外から若いカップルの話し声がしてきた。この展望台は夜景が綺麗だったので、それを見に来たのだろう。
 カップルなのでテントにいたずらされる事もなく、激しい雨のおかげで早々に去って行った。これが犬や悪ガキ集団だったら、また面倒なことになっていただろう。

 毎晩の寝床であるテントは、10年は使用している年代物。購入したのは四国八十八ヶ所をする前に立ち寄った、大阪のディスカウントショップだった。長年使っているのでシートの至る箇所が磨耗しており、開いた穴の補修を何度もしている。

 小降りの雨は問題ないのだが、大雨になると床部分がびしょ濡れになり、落ち着ける場所が寝ているマットの上だけになる。
 雨は昼に止む予報だったのでテントで休みたかったが、朝は雨風がまだ強く、そんな状態のテントではくつろぐことも出来ない。仕方なく荷物をまとめて雨の中を出発した。

 ブルートレインの宿が停まる多良木駅を越え、県道33号線で人吉市内に入り50番願成寺を参拝。その後、温泉街の近くにあった国宝の青井阿蘇神社を見学し、雨が早く止むようにと祈願した。

 九州の小京都と呼ばれる城下町の人吉をゆっくり堪能したかったが、雨のせいでそんな気も起きない。市内にある52番高寺院と53番観蓮寺を参拝して人吉は早々に去り、球磨川沿いの国道219号線で山に入っていった。

 次の寺があるのは60km離れてた八代市なので、2時間は走らなければならない。雨の日の長距離移動は寒いだけなので、修行のようでもある。雨で水量が増え、茶色く濁った球磨川を眺めながら、ひたすらに北上していく。

 道の駅坂本に到着すると、国宝神社での願掛けが効いたのか雨が止み、太陽も見え隠れしてきた。
 名物の「このしろ寿司」を食べ、夜のエネルギーに球磨焼酎の「峰の露」と、板なしのかまぼこ「冷やしかま」を購入。現地の物を手に入れると、夜の楽しみにもなる。

 回復した天気の中、八代市で54番医王寺を参拝。次の寺は熊本の中心部。再び長い移動だったが、雨も止んだし国道3号線も平坦で走りやすかった。
 熊本の中心部から都会になり、交通量も増えて渋滞も発生。しかし、こちらはバイクで路肩を走れるので、それには無関係。信号以外は停まることなく進める。

 中心部で55番本蔵院と56番金剛寺を参拝した後、写真を撮ろうと熊本城へ向かった。正面に城と路面電車が見える「通町筋」の駅でバイクを停めて撮影してると、横にある熊本パルコから音楽が聞こえてきた。

 城の近くなので殿様でもいるのかと見に行くと、なんとそこには直訳ロックで有名だった王様がストリートライヴを行っていた。おそらく今の若者には無名だろうが、一昔前は話題になって知名度があったアーティストだ。

 披露していたのは、その頃の代表作だったディープ・パープルの直訳メドレー。私は古い洋楽が好きなので彼がやってる事は笑えて好きだが、人気が去ってしまえば王様といえども都落ちになるのだろう。

 王様のライヴを堪能した後、市内から国道3号線を北上して国道208号線で西へ向かうと、交通量が途端に減って田舎風景になった。しばらく走ると馬刺しの店を発見。そういえば熊本は馬刺しが有名だったことをすっかり忘れていた。
 店を覗いてみると、たまたまなのか毎度なのか半額セールをしていたので、100グラム525円の馬刺しを半額で購入。また一つ今夜の楽しみが増えた。

 その後、馬の如く疾走し、玉名市で57番誕生寺を参拝して今日の寺巡りは終了。これからキャンプ地探しだが、玉名市周辺の川には目ぼしいポイントがない。大きな公園もないので、確実性を求めるとポイントは15km先の荒尾海岸。日が沈んで移動が面倒だが進むしかないと先へ向かった。

 前かごに入れてるボストンバッグはヘッドライトの光を遮るので、暗い時はどかさないと真っ暗で運転が出来ない。そういう時は肩に掛けるのだが、これが以外に重くて非常に肩が痛くなる。
 それを我慢しながら到着した海岸は砂浜ではなく、防波堤のような場所。地面はコンクリートだが、バイクで降りて行けたのここに決定した。

 今日は王様に出会うという意外なハプニングもあった。ライヴの中で彼は、ディープ・パープルの「Smoke On The Water」を「湖上の煙」と歌っていた。コンクリートの上で眠る今夜の私を直訳するなら、「路上の居眠り」といったものになるだろう。

[この日の写真]




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