マイナーな遍路道 (福岡〜大分) 2011年11月10日


 東海道と西国街道の宿場巡りながら、原付バイクで走ること9日間、ようやく九州の門司までやって来た。ここからが今回の旅の一番のメイン。2週間の日程で八十八ヶ所巡りをしながら、九州を一周する第3部の旅がスタートする。

 八十八ヶ所巡りと言えば、有名なのが四国のお遍路。そこは過去に自転車で巡ったことがあるが、九州にあもる事はこの旅を計画するまで知らなかった。
 四国八十八ヶ所は江戸時代初期に「四国遍路」という言葉と概念が成立し、民衆も歩くようになってメジャー化したが、九州八十八ヶ所が創設されたのは、1984年の弘法大師入定1150年記念が始まり。よって歴史はまだ浅く、マイナーな旅路とも言える。

 九州八十八ヶ所巡りのスタートになるのは、弘法大師が唐から帰って来た時に建立した、福岡県の博多にある1番札所の東長寺。
 ゴールの88番は帰国後に鎮護国家を祈念した、福岡県宗像市の鎮国寺。1番から88番へ時計回りに巡れば、ほぼ九州を一周できるルートになっている。

 正式な参拝では、20ヶ所の番外の寺を合わせた108ヶ所を巡るらしい。だが、全てを巡ったとしても私の煩悩は消えることはないので、88ヶ所だけを巡ることにした。

 自宅を出発する前に、寺の位置が全て載っている地図をインターネットで見たが、1番から順に巡るとかなり効率が悪いルートに思えた。それに、私は門司に到着するので、そこから1番の寺がある博多まで進むのもロスが生まれる。

 そこで、一番効率よく巡れるルートを独自に考え、スタートは福岡県北九州市戸畑区にある18番徳泉寺に決定した。ここをスタートにしても最後は88番で終われるし、2週間後に小倉駅で父親と会うリミットにも都合が良かった。

 独自に考えたルートは順番がランダムで、鹿児島と長崎ではフェリーも使用する。その方が時間や距離を稼げるし、何といっても移動が楽しめる。
 東海道と西国街道では走る道が全て決まっていたが、九州八十八ヶ所巡りはその決まりがない。地図を見ながら効率良い道を進めばいいだけ。そこで、寺巡りだけでなく、観光名所も訪れながら九州を一周することにした。

 各寺への細かなアクセス方法は、街道巡りと同様の文章地図。近くまではツーリングマップルを見ながら進み、そこからは事前に作成した文章地図を使うといった方法だ。

 九州一周の距離は正確には分からないが、大体1500km位と考えた。東海道や西国街道を走ってきたリズムと同様に、1日の移動は約150km。前日の晩に地図を見てどこまで進めるか計算し、その周辺の公園や川などをキャンプ地にする。
 この方法でいくと、今日は昨夜到着した門司のめかり公園から、温泉で有名な大分県の別府まで移動が可能。途中では、いくつかの観光地にも寄る事が出来る。

 まずはスタート地点に移動だと、昨夜到着しためかり公園から戸畑へ向かった。18番徳泉寺は町の中にあるこじんまりした寺で、入口脇には「九州八十八ヶ所百八霊場」の旗があった。それを見て、いよいよ八十八ヶ所巡りを始めるのだという実感が湧いてきた。
 戸畑は父親の故郷なので、子供の頃から何度も訪れたことがある。18番徳泉寺と次の17番阿弥陀院の周辺では、見覚えのある景色がいくつかあった。

 2つの寺でひとまず福岡県は終わり。次の19番晋門院があるのは大分県の中津駅近く。ここから60kmは離れているので、国道10号線を2時間は走ることになる。2日前から冬が到来して急に冷えだしたので、防寒着を着ていても体がかなり冷えた。
 体が凍る前に到着した19番晋門院は、寺というより空き家のような建物で、入口の看板は手書き。住職がいる気配もなく、参拝者が訪れている形跡も感じられなかった。

 近くで20番三明院を訪れた後、国道212号線を南下して観光地へ寄り道。訪れたのは日本唯一の8連アーチ石橋の「耶馬渓橋」、小説で有名になった「青の洞門」、全国羅漢の総本山「羅漢寺」の3ヶ所。
 特に印象的だったのは、羅漢寺にあった500体の石仏。全てが活き活きとした表情で人間らしく、中には滑稽な表情のものまであった。

 その後、来た道を少し戻り、八面山の平和公園近くにある21番神護寺を参拝。再び10号線に出て22番大楽寺を参拝し、近くにあった有名な「宇佐神宮」も観光した。
 次の23番光明院までは約30kmの移動。杵築の城下町にあった光明院の本堂は、岩山を彫った中に建てられていた。

 城下町は「日本唯一のサンドイッチ型城下町」で、南北の高台に武家屋敷があり、中間の谷間は商人の町となっている。「着物が似合う歴史的町並み」にも認定されており、南北を繋ぐ酢屋の坂の上からは、丁度よく坂道を歩く着物姿の人が見れた。2つを一緒に眺めると確かに絵になる風景で、その謳い文句に納得した。

 情緒ある城下町をゆっくり観光したかったが、時間がないので早々に移動。国道213号線を走って24番蓮華寺へ。そのまま10号線に出て別府まで走り、25番金剛頂寺を参拝して今日の寺巡りは終了にした。

 10号線は海沿いなのでキャンプポイントがあるだろうと考えていたが、これといった場所がない。別府タワーの近くに小さな公園があったが、ホームレスがいたり人通りが多かったりと、ここでは落ち着けそうにもない。
 どうしようかと地図を見ると、10km先に田の浦ビーチがある事に気が付いた。そこなら問題ないだろうと、先へ進むことにした。

 その判断は見事に的中。田の浦ビーチは小さかったが芝生があり、東屋やトイレも完備という絶好のキャンプ地。おまけに、ここから見る別府の町の夜景も素晴らしかった。
 今日は八十八ヶ所巡りの初日。観光もしながら9つの寺を巡れたので、いいスタートが出来た。ただ訪れた寺で、参拝客を見る事が一度もなかった。やはり四国とは違ってまだマイナーなのだろう。だがそんな遍路道だからこそ、この旅は楽しめそうな気がする。

[この日の写真]




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