栃木・群馬・埼玉編 2016年5月5日


 これまで3日間で巡った寺は24。残りの9つは栃木県、群馬県、埼玉県と広範囲に点在する。計算上は今日中に全てを巡れるが、ゆっくりはしてられないので、早朝に道の駅ろまんちっく村を出発。

 まず向かったのは、栃木県宇都宮市にある第19番大谷寺。周辺は古くから建築材料として利用されてきた大谷石の産地で、寺も洞窟に覆われるように建てられている。

 洞窟内にある本尊の大谷観音は4mの千手観音で、日本最古の石崖仏として有名。近くには高さ27mの平和観音像もある。これらよりも見たかったのは、大谷資料館の地下にある採石場跡。

 そこは古代ローマ遺跡のような巨大地下空間で、中を探索すればインディージョーンズさながらの冒険気分が味わえる。しかし、到着したのは朝7時だったのでまだ開館してなかった。

 凄く見たかったが開館を待ってる時間はないので次へ急ぎ、栃木市にある第17番満願寺へ向かう。途中の県道202号線には、石灰の採石場がいくつもあった。
 煙突やパイプ、階段やタンクなどで構成された石灰焼成炉は、芸術家が作ったようなオブジェとも思える外観で、不思議と目を引かれる建造物だ。

 満願寺を打った後に向かったのは、日光にある第18番中禅寺。紅葉やカーブの連続で有名ないろは坂を上って訪れた日光は、小学校の修学旅行以来で20年振り。
 この日は快晴で気温は高かったが風が冷く、それを浴びて走るバイクでは体感温度が低い。標高1269mに位置する中禅寺湖に着いた時には、震える程に体が冷え切っていた。

 歩いている観光客には丁度良い気温なのか薄着が多く、インド人らしき女などはノースリーブ姿で歩いている。この温度差は一体何なんだ。
 私は寒さが大の苦手。激辛カレーでも食べて体を温るか、早く下山しないとこのままでは凍死する。すぐに出発したが、進む先は栃木県と群馬県の境にある金精峠。標高は2024mでさらに気温が下がり、体の震えもピークに達した。

 走っている国道120号線は日本ロマンチック街道という別名があるが、震える私には少しもロマンチックじゃない。峠を越えて下りになったが、気分も体温も低下して不満チックだ。

 道中に東洋のナイアガラといわれる吹割の滝があったが、今はそれを見てる暇はない。とにかく早く体温を取り戻せねばと、一気に群馬県沼田市まで下り、さらに伊香保温泉へと上がる。

 温泉に浸かる時間の猶予はなかったが、この辺りでようやく風もなくなり気温も上昇。第16番水沢寺に着いた時には体温も取り戻した。
 水沢はうどんが有名なようで、讃岐うどん、稲庭うどんと並び、日本三大うどんのひとつとして挙げられているという。体温が戻った今は、うどんで体を温める必要はないので先を急ぐ。

 高崎市にある第15番長谷寺を打って群馬の2つは終了。残る4つは埼玉県。まずは比企郡にある第9番慈光寺を打ち、次に東松山市にある第10番正法寺へ向かった。
 寺には必ず「坂東〜番」という碑や看板があるのだが、正法寺ではそれが見当たらない。おかしいなと寺の名をよく見ると、そこには「正法禅寺」と一文字多い名が刻まれていた。

 地図上では正法寺となっていたが、下調べで寺の名を間違えたのか。もう一度地図を見ると近くに桂木観音があった。三十三観音の寺には必ず観音が祀られている。
 おそらくここと間違えたのだろうと行ってみたが、そこにも「坂東〜番」という文字はなし。もうどこだが分からないし調べてる時間もないので、この桂木観音を第10番とすることにした。

 次の比企郡吉見町にある第11番安楽寺の前に、吉見百穴に立ち寄った。吉見百穴は古墳時代後期に死者を埋葬する墓穴として掘られた、岩壁に無数の穴が空いている所。
 既に閉まっていたので中には行けなかったが、入口から少しだけその岩壁を見る事が出来た。

 正法寺の事がまだ気になっていたので、ここでもう一度地図を見返した。坂東三十三観音の全ての場所は、ipod touchの電子地図に登録してある。ただそれだと見づらいので、出発前にその日訪れる寺をツーリングマップル上で丸印をしていた。

 電子地図で正法寺を確認すると、なんと丸印した場所が間違っていた事が発覚。本当の正法寺はもう少し東に位置しており、ツーリングマップルでは寺の名前が記載されていなかった。

 同じ名前の寺が近くにあったのが間違えた原因。だが今から正法寺に戻る時間はないので諦め、さいたま市にある第12番慈恩寺を目指す。何度も道に迷いながら到着した時は既に日も沈み、明かりがない寺は真っ暗だった。
 ここ慈恩寺で三十三観音を結願。予定通り4日間で全ての寺を巡る事が出来た。一ヶ所は場所を間違えるというアクシデントがあったが、これはこの旅のオチになった。

[この日の写真]




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