茨城編 2016年5月4日


 天気予報通り夜中から雨が降り出し、朝早く目覚めた時もまだ降っていた。予報では昼には天気は回復するとのことだが、それまで待っている時間の余裕はない。
 8時頃に小雨になってきたので、雨の中を走る覚悟で合羽を着て出発すると、途端に雨が止んで太陽が雲の隙間から姿を現した。昨日訪れた寺で観音様に願っといたのが効いたようだ。

 これまで三十三ヵ所のうち、神奈川、東京、千葉にある17の寺を巡った。残りは半分で、今日は茨城県にある寺を全て巡る。この辺りも寺と寺の距離があるので、今日もバイクで走りっぱなしになるだろう。
 キャンプした霞ヶ浦総合公園からまず向かったのは、土浦市にある第26番清瀧寺。その後、筑波山の山腹にある第25番大御堂へ向かう。

 筑波山は茨城県のシンボルで、男体山と女体山がある山。若い頃にケーブルカーで山頂まで行った事があるが、あまり記憶に残っていない。
 寺の近くに沼田屋という、かりんとう饅頭を売る店があったので覗いてみた。私は酒飲みなので普段から甘いものは一切食べないが、試食したところ美味かったので、土産にこれを購入。

 第25番大御堂の本堂からは坊さんが唱えるお経が聞こえ、ゴールデンウィークのせいかやたらに人が集っていた。何か特別の行事をやってるのかと境内にある土産屋で聞くと、毎日行われる11時の法要との返答。

 神頼みや法要を静かに聞き入る人々を見ると、日本は無宗教だと言われるが、実際は信仰深いのだと改めて思う。境内には放し飼いにされている孔雀がいて、その姿がやけに神々しかった。

 茨城県内を北上し、益子焼きで有名な益子町の第20番西明寺を打つ。ここには閻魔堂があり、その中には珍しい「笑い閻魔」の像があった。
 閻魔大王というと地獄の門番。それが笑っていたら示しが付かず、逆に下を出されて馬鹿にされそうなもの。

 実はこの閻魔は「五七日本尊地蔵菩薩」の化身で、地獄に落ちた人を救うために派遣された地蔵様。他人のためなら地獄まで行くという、善随行を実行しているありがたい閻魔のようだ。

 第20番西明寺から南下して、日本三大稲荷の笠間神社近くにある第23番観世音寺を打つ。花にはほとんど関心がないが5月はツツジの季節のようで、境内にもけっこう咲いていた。
 笠間稲荷は来た事があるが、名物にそば稲荷がある事は知らなかった。その名の通り稲荷の中身がそばというもの。1つ食べてみたが、これが意外と美味しかった。

 その後、常陸太田市にある第22番佐竹寺を打ち、奥久慈にある第21番日輪寺へ向かう。奥久慈は冬に凍る袋田の滝が有名。冬じゃないがこの滝も訪れたことがある。
 途中、道の駅奥久慈だいごで休憩。土産屋を覗くと、万能だれの「なめてみそ」という商品を発見。これは茨城県の道の駅でしか売ってないというソウルソース。

 愛知県には地元で有名な「かけてみそ」という調味料がある。味噌ベースのこの調味料は色々な料理にトッピング出来るので、冷蔵庫に1本入れとくなる1品。
 おそらくこのネーミングを「なめてみそ」は真似たのかもしれない。それでも興味が湧いて土産に購入。家に戻った後に早速使ってみたが、なめてみそも色々と応用出来る美味しい調味料だった。

 道の駅では、同様にバイクで坂東三十三観音を巡るおじさんと遭遇。静岡出身の彼は私とは逆回りで埼玉からスタートし、やはり独自の順番で巡っていた。
 一期一会の出会いでも、同様の事をやっている人に出会うと妙に親近感が湧く。茨城の後は千葉へ南下し、フェリーで横須賀に渡って神奈川を回ると話していた。

 第21番日輪寺は山深い八溝山の山頂にあった。茨木も北部に来ると、天気が良くても5月じゃまだ寒い。おまけにバイクで走ってるので気温があっても、風を常に受けながら走る身には体感温度が低い。

 脱ぐのが面倒臭くて朝から着たままの合羽だったが、この辺りでは防寒着代わりになって活躍。寺は山の上にあると、尚更その威厳が増す。下界とは隔離された特別な空間といったところだ。

 今日は茨城と栃木にある7つの寺を打ち、ここ日輪寺で巡礼は終了。明日のスタートは栃木県宇都宮市にある第19番大谷寺なので、近くまで移動しとこうとアクセルを吹かす。
 テント泊の旅をしてると毎度の事だが、風呂に入るのは省略する事が多い。だが、長時間バイクに乗ってると体は疲れるので、そろそろ癒しが必要。

 風呂に入りたいと地図を見ると、キャンプ予定地の近くに「梵天の湯」なる温泉を発見。梵天とは古代インドで、宇宙の根源とされたブラフマンを神格化したもの。仏教にも取り入れられて仏法護持にもなった神だ。

 観音巡りをしている今の私には、まさにぴったりの湯。そこで身も心もリフレッシュして気分だけは極楽へ。その後、道の駅ろまんちっく村の奥にあった広場に移動して今夜の寝床を作り、焼酎を飲んで再び極楽へと昇天した。

[この日の写真]




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