仏教の先生 (クミッラ) 2003年6月23日〜24日


 チッタゴンから列車でクミッラへ移動した。宿は駅近くの「HOTEL ABEDIN」にチェックイン。料金はシングル50タカで、かなり安い。クミッラでの滞在は1日の予定だったので、チェックインしてすぐに町へ飛び出した。

 コトバリにあるバードと呼ばれるアカデミーまで行くつもりだったが、ベビー乗り場も見つからず、おまけにリキシャとの料金交渉もうまくいかなかったので、方向だけを頼りに適当に歩いて行ったが、これがえらく遠かった。

 道中は田舎だったので途中でリキシャとも出会わず、目的地のバードまで1時間半も歩いた。ここのカフェテリアで美味しいカレーが食べれるらしかったが、学校内に入って学生の興味の対象になってしまったらさらに疲れると考え、目的のカレーは諦めて近くの食堂で飯を済ませた。

 もう一つの目的地であるモエナモティ仏教遺跡は、バードからそんなに遠くはなかったので歩いて行った。途中で休んでいると、通りかかったリキシャに乗っていた客が声を掛けてきた。遺跡に行くのだろうと聞かれ、そうだと答えると、だったらついでに乗ってきなよと言われた。

 最初は断ってたが歩くのも疲れていたので、その親切を受け取る事にした。声を掛けてきたのは、ニュー・サルボン・ヴィハラという寺院で働いている仏教学校の先生をしているという男。寺院の中を案内してくれるというので、そのまま連れて行って貰う事にした。

 寺院といってもそこには大きな寺があるわけでなく、部屋が二つあるだけの小さい建物。一つの部屋にはタイから贈られたという2mの仏像があり、少年僧たちが昼寝していた。
 彼らはこの先生が来るなり、全員叩き起こされていた。もう一つの部屋に案内されると、そこにはこの寺院だか仏教学校だかの校長がいた。

 しばらく部屋の中を眺めていると、先生は訪問者の名前を記入するようなノートを持ってきて、これに名前を書けと言ってきた。
 ノートは新品で中には名前など一つも記入されてない。ここを案内してくれてる事には感謝していたが、突然名前を書けなどという押し付けがましい態度が嫌だったので断った。

 これは無料だと仏教の本も差し出されたが、それも断った。私が断り続けていると先生は声のトーンを少し上げ、「この人は校長で、私は先生だ。そしてお前は仏教徒なのだろう」と、何だか訳の分からない事を言い出した。
 何を求められてるのかさっぱり分からないし、これ以上ここにいても会話は進展しないだろうと感じたので、礼を述べて寺院を去った。

 先生との会話の中には、ここで仏教を学ぶ生徒は多くいるが、学校には資金がないとの話もあった。寄付しろとは言わなかったが、たぶん目的はそれだったのだろう。
 私は無宗教だが、出会った人間と宗教の話になった時は仏教徒だと言う時もあった。今回はそれで話がややこしくなった。この仏教の先生は「まぎらわしい事は言うな」と教えてくれたのかもしれない。




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