オフシーズン (コックス・バザール) 2003年6月17日〜19日


 世界一長いビーチがあるコックス・バザールまでは、バンドルボンからバスで2時間半。到着したバス・ターミナルから5km離れた市街地へ向かい、調べておいた「HOTEL PANOWA」にチェックイン。ビーチには遠いがメインロードに面しているので、立地条件は悪くなかった。

 チェックインをした後に町で食事を済ませ、地理を覚えようとそのまま散策した。歩いていると、前から来たリキシャに乗った男に突然声を掛けられた。
 この男はいろいろと質問した後に、今夜7時に会わないかと聞いてきた。私も少々図々しい男だが、この厚かましさにはまるで敵わない。

   町では選挙運動も見かけた。演説をする候補者の自転車前部はスピ−カーが付けられ、後部には野菜が描かれた大きなポスターを乗せている。町の壁に貼られている選挙候補者のポスターにも、それぞれに野菜や果物、動物といったトレードマークの絵が描かれていた。
 これは識字率が低い地域への対策であるようだ。候補者の名前が読み書き出来ないので、日頃身近にある物で自分を覚えて貰う方法なのだろう。

 ビーチまで行く途中には小さい空港があり、敷地内では人や牛がのんびりと昼寝などをしていた。勝手に入っても大丈夫なくらいのどかなんだろう。
 周辺には水田が広がり、日本の昔を思わせるような農家が点在していた。小川の橋からは子供たちが飛び込んで水遊びをする、万国共通の姿もあった。

 既に雨季に入っていたので予想通りビーチは閑散としていた。おまけにさほど綺麗でもない。ビーチの一部の木々の間にはテントの様な作りの小屋が立ち並び、貧しい人たちが生活していた。
 浜辺ではそこの住人たちか、網を使用した独特な漁をする者の姿があった。漁というよりは、今夜の食料を調達していたのかもしれない。

 ビーチを南に下って行くとパラソルがいくつも見えた。きっとここがメインの場所なのだろうが、観光客は僅かで泳いでいる者は一人もいなかった。
 何軒か土産屋が並んでいたが客はおらず、どこも閑古鳥が鳴いていた。オフシーズンのビーチは本当に淋しい。

 町にある店で英語の雑誌を売っていたので、暇つぶしになるだろうと、10タカのその雑誌を買った。
 何冊かエロ雑誌のようなものもあったのが、水着の女の写真があるだけで、それは文が主体のものだった。女が肌を露出してはならないイスラム世界では、これくらいが限界なのだろうか。

 バングラデシュに入ってから撮影した写真を、この町で現像に出した。出来上がった写真を見てみると、チッタゴンでの子供たち、バンボルドン、コックスバザールの海などが写ってない。

 原因は安いフィルムを使っていた為か、写真屋が現像に失敗したかだ。貴重な写真がなくなるとは非常に残念だ。もう2度と安いフィルムは買わないことにした。海にエロ本に写真といい、コックス・バザールはどこもかしこもオフシーズンだった。




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