未知との遭遇 (バンドルボン) 2003年6月14日〜17日


 バンボルドンのショコン川周辺には狭い道の両脇に店が並び、ベンガル人やモンゴル系の顔をした民族たちが物を売っていた。木造の簡素な家も立ち並び、川では若い子たちが水浴びをしていた。
 野菜や果物などを積んだボートも何隻かあった。必要最低限のものしかない感じで、見渡す景色は自然そのものだった。

 町の丘の上にある仏塔も見に行った。イスラム世界のバングラデシュに仏塔があるのも珍しい。木陰で休んでいると、丘から袈裟を着た子供の修行僧の行列が歩いているのが見えた。面白そうなので丘を下り、その行列の後をついて行ってみた。

 子供の修行僧たちは、アルミで作られた細長い飯盒のような弁当箱を手にぶら下げている。しばらく歩いていると、何人かづつ町の各方面へ散って行ってしまったので、それ以上追いかけるのは止めた。彼らはどこへ行くのだったのだろう。弁当箱をぶら下げていたから、托鉢にでも行ったのだろうか。

 近郊には唯一の行楽地であると思われる、メグマという大きな公園があった。入場料5タカの公園内には吊り橋が架かる大きな池があり、周りは森のようだった。
 公園の一角には、鹿、猿、鳥などがの動物たちがいる檻もあった。周りに自然が溢れている環境の中、檻に閉じ込められている動物たちが、ひどく哀れに思えた。

 間違いなく定員オーバーと思われる乗合ジープに乗り、悪路を1時間走ってバンボルドンからチム・ブックへ行ってみた。ここはバンドルボン周辺の中でも、特に有名な観光地であるとガイドブックに書かれていたのだ。

 どんな所なのかと期待していたが、ジープから降ろされた場所は緑に覆われた丘陵地帯が一望出来るだけで何もない。少し先に歩いて行くと休憩所のようなものがあり、警察官が二人いた。その横には物置サイズの錆びれた売店があった。

 坂道を上がった所には「ポリス・キャンプ」と書かれた小屋があり、そのさらに上には、宿のような小屋と高い鉄塔が立っていた。
 行くあてもないので売店に戻りチャイを飲んでいると、どこからともなく腕白なベンガル人たちが5人程やって来て、恒例通りの質問攻めが始まった。

 バンドルボンやチム・ブック周辺には、多くの少数民族が住んでいる。昼飯を食べに入った店には、民族らしき男たちが何人もいた。彼らの髪型は日本の弥生時代の頃のようなもので、髪を丸く結わいたものが頭の上にあった。

 店にいた子供たちの耳たぶには、紙を巻いたような5センチくらいの大きさの細いものが、両耳の開けられた穴に刺さっていた。
 私は余所者が場違いな所に入り込んでしまったという肩身の狭い思いと、初めて遭遇する民族たちを見た興奮とがミックスしていた。

 独特の髪型をしていた男の写真が撮りたかったので、ジェスチャーで撮ってもいいかと尋ねたが、首を横に振られた。後で聞いて分かったのだが、この男はムロン族だった。何もないチム・ブックだったが、彼らを見れただけでもここまで来た甲斐があった気がする。




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