招かれた食事会 (チッタゴン) 2003年6月10日〜14日


 バングラデシュ第二の都市チッタゴンへは、ダッカから夜行列車で移動。私の席の後にいたのは日本語が出来きるお喋りな奴。しつこく話してくるので、なかなか寝ることが出来ない。列車の椅子も座り心地が悪く、朝目覚めた時には首と肩が酷く痛かった。

 チッタゴンに到着後、旅人から聞いていた駅前にある「HOTEL DREAM」を訪れると、部屋が空くのに30分待てと言われた。食事を済ませて30分後に戻ると、さらに1時間待てと言う。頭に来てたので、他の宿を探すことにした。

 周辺のホテルはどこも250タカで高め。駅前を離れれば安宿があるだろうと歩くと、「HOTEL GOLDEN STAR」と書かれた大きなビルを発見。しかも料金はなんと100タカ。部屋は広くも綺麗でもないが料金が安いので、迷わずそこにチェック・インした。

 宿の近くにはレストラン・バーがあり、そこでビールを飲むことができた。ダッカのレストランと同様にここでも料金は高く、ハイネケンの500mm缶で200タカ。泊まっている宿よりも高い。おまけにビールは冷えてなく、店はレストランといっても定食屋のようだった。

 インドのカルカッタの宿で出会った日本人の旅人と、このチッタゴンで再会した。彼はバングラデシュ人の友人に夕食を招待されており、私も一緒に来ないかと誘われたので、連れて行って貰うことにした。

 友人というのは年配のおじさんで、商店を経営していた。旅人の彼はチッタゴンに来るのは二度目で、以前に来た時にこの店の前を通りかかり、おじさんに声を掛けられたのがきっかけで友達になったという。

 1時間後にもう一度会おうと、一旦おじさんと別れた。約束通り1時間後に店に戻ったが、おじさんはやって来ない。なかなか現れない間、店番をしている若者たちのいい遊び相手になった。
 おじさんが自分の子供を連れて店にやって来たのは、さらに1時間後だった。待ち合わせなどの時間の概念が、日本人とはかなり違うのだろう。

 おじさんの家に行くのかと思ったが、訪れた場所は大きなパーティー会場のような所だった。どんな繋がりなのか分からないが、そこには60人程の老若男女が集まり、誰もが正装していた。

 テーブルに用意されていたチキン、エビ、マトン、ビーフなどの料理を頂けたのだが、落ち着いて食事をする訳でもなく、食べ終わるとすぐにテーブルを離れて後の者と入れ替わるようなシステムだった。

 多くの者が家族で来ていたが、女たちとはテーブルが分けられており、女たちは奥の見えない所で食べていた。
 食後は応接間のような場所でくつろいでいたが、ここにも女たちが現れる事はなかった。皆で食事をするパーティーなのに、男と女の間にはコミニュケートが一切無い。

 ダッカで聞いた女性のお洒落の仕方もそうだが、ムスリムの習慣には理解できないことが多くある。しかし、よく分からない食事会に参加できたのは、貴重な体験だった。

 食事会を終えて宿の部屋に戻ると、従業員が殺虫剤を撒きにやって来た。蚊でも多く出るのかと思ってたら、その後にゴキブリが現れて鏡台の後ろに入り込んだ。
 退治しようと鏡台を動かすと、なんとそこには7匹ものゴキブリがいた。さすがに怯んだが安心して眠れないので、格闘しながら全てを退治した。ビールの料金よりも安いこのホテルの理由が、ここで初めて分かった。




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