インドからバングラデシュへ (クルナ) 2003年6月3日〜5日


 インドのカルカッタから列車に乗り、国境の町パンガオンに到着。国境へは駅からリキシャに乗って向かった。
 バングラデシュのビザは、ネパールのカトマンズにある大使館で取得していた。インドを出国してバングラデシュ側のイミグレーションでパスポートを見せると、係員はビザを見ながら何やらぶつくさと言ってきた。

 聞き取れた部分によると、ビザを取得したネパールのバングラデシュ大使館で、ビザを取り直さなければ入国出来ないという事だった。
「そんなバカな話があるか。ビザは発給されてるのだし、今更そんな事をここで言われても知るか。これは俺の責任じゃないから、あんたが電話でもして何とかしろ」

 そう強く訴えると係員は何やら渋っている様子だったが、そのうち何かを書き込み始め入国が許可された。大体ビザは発給されているので問題があるはずがない。おそらくビザには何の問題などなく、金を少し騙し取ろうとしていたのだろう。

 国境からバスに乗ってジョソールまで行き、そこでまたバスを乗り換え、最初の目的地であるクルナへ向かった。バングラデシュ人の顔はほとんどインド人と同じだが、雰囲気はやや違う。物価もさらに安くなったようだ。

 首都のダッカへはバスや列車を利用して行く事も可能だが、私はロケット・スチーマーという船を利用して、ブリゴンガ川をクルージングをしながらダッカへ行こうと考えていた。
 バスや列車に比べるとかなり時間はかかるが、このルートの方が楽しめる。船が出港してるのが、向かっているクルナからだった。

 夕方クルナに到着し「ARAFAT」というホテルにチェックイン。部屋は一泊140タカのシングル。このホテルでは従業員に会う度に「マダム、マダム」と、女を買わないかとしつこく聞かれた。クルナだけに「もう来るな」と言いたい気分だった。

 ロケット・スチーマーの乗り場は鉄道の駅の近くにあったので、チケットを先に購入しといた。セカンド・クラスの料金は480タカと聞いていたが、実際は610タカだった。出発は朝3時。首都のダッカには翌日の朝6時に到着するので、27時間の船旅になる。

 セカンド・クラスの客室にはベッドが2つあった。出航間際になっても他の客が入って来なかったので、個室で使えるかもと期待した。
 船が走るブリゴンガ川はかなり広く、どこまで行ってもヤシの木や畑などの景色が見えた。途中で停泊した乗船場には古い船を利用している所などもあった。

 夕方頃に停泊した港で、もう一つのベッドの客である爺さんと若者が部屋に入ってきた。若者は爺さんの孫で、ベッドを利用するのは爺さんの方。孫はサード・クラスの客室で眠ると言っていた。

 爺さんはしばらくすと、熱心に祈りを上げ始めた。これがムスリムの祈りで、向いている方角はメッカなのだろうかと、横目でチラチラと盗み見た。未知なるイスラムの世界に足を踏み入れた実感が、それを見て徐々に湧いてきた。




Copyright (C) 2019 諸行無常 All Rights Reserved