終章


 佐渡島から自宅に戻った私は、沖縄の時と同様にどれだけ歩いたかを調べてみた。移動した距離の合計は191km。一周210kmに届いてないが、ほぼ一周したに近い距離だろう。もし途中で車に乗らなかったとしても、10日間で一周することができたと思う。

 沖縄の時は1日に30km進むペースでかなり無理したので、今回はゆっくりなペースで歩いが、それでも1日平均25km位は歩いていたようだ。 
 足首やふくらはぎは毎日痛んだが、歩くのが苦になる程ではなかった。まあ数ヶ月前に沖縄を歩いたので、体が慣れていたのかもしれない。

 今回もキャリー・カートが故障するトラブルに見舞われた。使用していたキャリー・カートは積載40kgまで可能なものだが、そもそも長距離を移動するためのものではないので、毎日長時間使用していればすぐ壊れるのは当たり前なのだろう。

 多分、タイヤが4つある台車を使っても同じことになるような気がする。やはり歩き旅にはタイヤの大きなリヤカーを使うのがいいのだろうか。
 だが、リヤカーはデカ過ぎるので持ち運びが不便。もし、これらに代わる物が思いついたら次の旅に使用してみたい。

 島を歩いていて見かけたチェーン店は、コンビニのセーブオン、ホームセンターのコメリ、弁当屋のほっともっとの3店だけ。あとは個人が経営する小さな商店だった。
 本州から離れた日本海の孤島というロケーションが、外資や大型チェーン店を寄せ付けず、ローカルな雰囲気を留めているのかもしれない。

 それと、「佐渡を世界遺産に」というステッカーを貼った車も多く見かけた。確かに佐渡は、田んぼ、古民家、港、太鼓、能、酒、米、魚、素朴な人間といった日本の要素が凝縮している島に思えた。世界遺産になるかならないかは別としても、この日本的な良さはいつもでも残って欲しいものだ。

 旅から戻った私に待っていたのは、出発前に応募した林業研修生の結果通知である。期待しながら封を開けてみると、なんと不採用。やはり宝くじのような倍率だった応募に受かるはずもなかった。
 よって私は相変わらずフーテンの寅のまま。相棒の引次郎に「林業の仕事じゃなくても、山の中でも冒険するか」と声を掛け、日本地図をペラペラとめくった。


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