インドのフランス (ポンディシェリー) 2003年3月9日〜11日


 南インドの東海岸沿いにある、インド洋に面するポンディシェリー。かつてフランス領であったポンディシェリーは、今も一角にヨーロピアンな雰囲気を残し、他のインドの都市とはなんとなく違う雰囲気を漂わせている。

 ポンディシェリー近郊には、オーロヴィルという新興宗教の町がある。田園地帯に広がる町には、世界35ヵ国から来た約1700人が暮らしており、ヒューマンユニティーの実現を目指して協働を続けている。実験型エコヴィレッジなどとも言うらしいが、簡単に言えばヒッピーのコミューンだ。

 創設は宗教哲学者で詩人のスリ・オーロヴィンドと、フランス人画家・音楽家のミラ・アルファッサ。この二人の宗教・哲学・芸術をベースとし、経済的、文化的、環境的に自立した、持続可能な自然循環型社会の創造が目指されている。

 この施設が一体どんなものなのか見に行くことにした。自転車をレンタルしてサイクリングがてらに行きたかったのだが、泊まっていた宿の付近にはレンタル屋がない。諦めてバスに乗りオーロヴィルの手前で下りると、そこにレンタルサイクルがあったので、そこから自転車で向かった。

 オーロヴィルの中には広大な森があり、いくつもの村が点在していた。ここには幼稚園から高校までもあるという。様々なショップもあり、ゲストハウスや民宿などもあり、確かに独立した町を形成している。ここで人々が協働しながら暮らしているらしいが、その3分の2は白人らしい。

 町の中心には精神活動のセンターとして造られた、「マトリマンディール」と呼ばれる巨大な黄金のドームがあった。ドーム内には大きなクリスタルの球体が安置されており、怪しげな光を放っていた。
 ここで瞑想を行なうと、その時の意識が増幅するという。ここでなくても静かな場所で意識を集中すれば、どこでもそうなりそうな気がするのだが。

 私がポンディシェリーで泊まっていた宿は、漁村の中にあるユース・ホステルだった。宿の周りにはローカルなインドらしさが充満しており、貧しくはあるが人々が活き活きと暮らしていた。宿の近くのバーで飲んだ時も地元の漁師の連中に会い、一緒に酒を飲んで盛り上がった。

 オーロヴィルではヒューマンユニティーの実現を目指して、人々が平和に暮らしているのかもしれない。しかし、そこは町からは独立したコミューンで、暮らしているのはほとんど白人。考えようによってはフランスの植民地小さくなって、ただそこに残っているだけだ。
 私はオーロヴィルよりも宿泊していた漁村の方が、よっぽど自然循環型社会なのではないのかと感じる。




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