南の楽園 (ゴア) 2003年2月16日〜19日


 南インドのリゾート地ゴア。この土地はヒッピーや貧乏旅行者なら一度は耳にする場所で、多くの者が長期滞在する沈没地である。そんなゴアの中でも有名なアンジュナ・ビーチへ訪れた。

 ギラギラと輝く太陽に開放感をくすぐる青い海。椰子の木やバナナの木が広がる緑溢れた自然。まさに楽園という名がぴたりと当てはまる場所にも思える。
 レンタルの単車や原付も借りられるので、それに跨って町を疾走することも出来る。これだけ条件が揃えば旅行者が長く足を止めるのも分かる。

 しかし、この町が多くのヒッピーを惹き付けている理由は他にある。それは、ドラッグが簡単に手に入り、年中パーティーが行われてるからだ。
 ビーチ沿いにあるオープンテラスのディスコでは、トランス・ミュージックが流れ、音楽やクスリの雰囲気に酔って踊り回る連中が沢山いる。素面でいる奴はほとんどいないだろう。

 満月の夜は特に盛り上がるフルムーン・パーティーがある。開催されるのは空地や寺院跡など。そこへレンタルした単車や原付で向かうのだ。
 フルムーン・パーティーとは違うが、町外れのレストランだかディスコでパーティーがあると言うので足を運んでみたが、着いた時には既に終わっていた。店の周りには帰る客の単車や原付がごった返し、まるで暴走族の集会のようだった。

 先進国から来た者にとってはインドは物価が安いので、少しの金でも金持ちのようになれる。日本円なら500円程で、1日の宿泊費と3食を済ませることも可能だ。
 おまけにこのゴアには心を開放させる大自然に加えて、ドラッグやパーティーもある。こういった要素から、ゴアが楽園という名で呼ばれているのだろう。

 多くの観光客が常に訪れて金を落としてくれる事は、地元の人々も大歓迎であるだろう。だが一方では、よそ者が好き勝手に自分たちの土地で遊んでいることには、心からは歓迎はしてないはずだ。

 ゴア周辺にはキリスト教信者が多くいるからなのか、南インドは北インドとはまったく雰囲気が違う。北インドでは殺伐とした雰囲気が常にあったが、ここでは土地柄も含めてのんびりした空気がある。
 それに、酒屋や酒場も普通にあり、北インドではあまりなかった魚を使った料理も食べられる。日本人の私にとっては久しぶりに食べられる魚はご馳走だった。

 レンタルした単車で町にある教会まで行った時は、最高に気持ち良かった。真っ青な空の下に広がる緑一色の景色の中、南国の風を全身に受けながらのツーリング。ヘルメットも被る必要がなかったので、快適さはなおさらだ。

 見に行ったボム・ジェズ教会は世界遺産で、日本でも有名なイエズス会の宣教師フランシスコ・ザビエルの遺体が安置されている教会。しかし、大自然の美しさを堪能した後では、教会はただ古さを感じるだけのものだった。

 ヒッピーのパラダイスのゴア。確かにここで1ヵ月も2ヵ月も暮らすことは、何事にも縛られない天国であるのかもしれない。人によっては溢れる快楽に溺れ、この土地から出られなくなっている者もいるのだろう。

 私にとってこのゴアは3、4日の滞在で充分だった。観光客など誰ひとり来ない小さな定食屋で、地元の連中に紛れてフィッシュカレーを食べた事。バイクに乗って自然の中を走り回った事。そういった事の方が、むしろパーティーで騒ぐことよりも自由であったと思える。南の楽園ゴアは訪れた者にいろんな刺激を与えてくれるのだろう。




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