終章


 沖縄一周てくてく旅を終えて神奈川の自宅に戻った私は、ネットの地図を利用して自分がどれだけ歩いたのかを細かく調べてみた。

 その結果、1日のノルマだった30kmは、平均してこなしていた。無理した日などは38kmも歩いている。そりゃ体もくたくたになるはずだ。
 合計も当初目算した300km以上はあったので、旅の3日目にルートを変更した決断は正解だった。

 引き摺っていたキャリーカートの荷物はキャンプ道具一式で10kg、食料が6kg、それと常に満タンにしていた2リットルのペットボトル2本で4kg。全部合わせると大体20kg。

 面倒臭がりの私は、出発前に10日分の食料を用意しといた。その内容は、米1,5kg、レトルト食品10袋、缶詰13個、カロリーメイト2本入り12個、ゼリー飲料5個、ピーナッツ、アーモンド、ビタミンC入りの飴、カリカリ梅が1袋づつ、ティーパック10袋、スティックシュガー50本。

 レトルト食品と缶詰は半分にして2食分に利用。昼飯はカロリーメイトとゼリー飲料。それだけでは足りないので、コンビ二でおにぎりやから揚げを買っていた。
 10日分の準備だったので1日予定が増えた分として、パックの白米2つと缶詰を5個を途中で買った。

 もし、これから同じ事をやろうとしている人がいたら、何も食料は全て準備してなくてもいいと助言する。やんばるの地域を含め、1日歩いていて店がなかったことはないからだ。ただ中部の山の中までを歩くとしたら、話は別だろう。
 それと台車を使うならどうだか知らないが、キャリーカートの場合は積載が40kg可能な大型を勧める。もし普通のカートを使用したら、おそらく私と同じ目にあうだろう。

 前にも書いたが歩き旅は登山に似ていると感じた。息切れするような事はないが、足腰にはかなり負担がくる。それとカートを引っ張るため腕が常に後ろを向いてるので、肩や手首、間接などもひどく凝る。

 痛みを和らげる為に私は朝・昼・晩と1日に3回、筋肉や関節の痛みをとるインドメタシン局所吸収薬を塗っていたのだが、頻繁に塗っていたので11日間で82mlのタイプのものが空になった。

 私は旅を始める前の10日間に2,3時間歩くというトレーニングを毎日しただけで、ほとんど運動不足の体と言ってもいいコンディションだった。疲れや痛みの個人差はあるだろうが、疲労に関してはそんなところだろう。

 たっぷりの睡眠を取れば、翌日もまた歩ける体力は回復すると思う。これもまた人によりけりだが。
 帰りの日が決まっていたので私の場合は1日30km歩くというペースだったが、時間の制限が何もなければ、1日15〜20kmの移動のペースが丁度いい気がする。

 冒険家で有名な人間は多くいるが、リヤカーマンと呼ばれる人を知ってるだろうか。それは第10回植村直己冒険賞を受賞した永瀬忠志氏である。リヤカーを引いて世界中を旅したその距離の合計は、約43000kmと地球一周に相当する。

 歩くだけでも大変なのに、合計200kg位の重量のリヤカーを引いて1日に40kmも移動するというのだから、この人はやはり超人だ。似たような事を今回自分で経験してみて、改めてその功績の凄さが分った。

 歩くだけというシンプルな旅の中では、ささいな事が一喜一憂になった。人生も似たようなものだろう。何気ない平凡な日々が、一番幸せなのかもしれない。
 だが、慣れてくると刺激が欲しくなり、ついついどこかへ旅したくなるのも性。それには資金が必要になる。ウォーキングじゃ金は稼げないので、早いとこワーキングの日々に切り替えなければ。

[この日の写真]


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