偶然見つけた博物館 (ソウル) 2009年9月4日〜6日


 今回で3度目になる韓国の首都ソウル。といっても過去の2回は10年も前の事で、その記憶もあやふやなもの。そこでひとまず、景福宮、明洞、南大門市場など、代表的な観光地を巡ることにした。

 どこを訪れても感じたのが、日本人がやたらと多くいること。この時はかなりのウォン安になっていたので、買い物目当ての観光客がかなり押し寄せていたのだろう。
 レストランや土産屋にも日本語の文字が多く目に付いた。昨日まで一ヶ月中国にいた私には、そんな状況の韓国がほとんど日本と変わらなく見えた。

 これじゃ面白くないので、どこか韓国らしい場所はないかと、観光案内所で貰った無料地図を見ていた。するとオリンピック・スタジアムやロッテ・ワールドがあるエリアに「キムチ・ミューアジム」があることに気が付いた。
 キムチといえば韓国人の食卓の上には欠かせない一品。テレビでは漬け時を知らせる「キムチ天気予報」も流されるくらい生活に根ざしている。

 これを知らずとして韓国は語れない。ショッピングで金を使ったり、エステで癒しに浸かったり、乾流ブームでヨン様に浸かってるだけでは駄目なのだ。まずはキムチに浸からなければ。そう考えて、そのキムチ・ミューアジムへと行ってみた。

 博物館には80種類余りのキムチが展示されていた。白菜、大根を使ったオーソドックスなものから、珍しいところでは、なすキムチ、柿キムチ、にらキムチ、海の幸キムチなど、実に多種多様なキムチがあった。

 キムチの原型が登場したのは先史時代で、その歴史は非常に長い。10世紀ごろまでは単に塩や粕で漬けたものが一般的だったが、高麗時代に入るとさらに薬味が入り、味は多彩になっていく。そして朝鮮時代にメキシコの唐辛子が輸入され、現在のような赤いキムチへと変貌を遂げたという。

 キムチは単に野菜を長期保存するだけでなく、微生物の働きで独特の風味と有機酸を生み出す発酵食品。しかし、韓国の気候は季節の変化が早いため、人々は昔からキムチの保存に頭を悩ませてきたようだ。

 冬には乳酸菌の働きが鈍くなり、反対に夏は暑さのために一日足らずで発酵してしまう。そこで冬は甕を土に埋め上から藁をかぶせ、夏には乳酸菌の発酵を遅らせるため流水の中に置くという工夫もされてきた。

 甕は形やデザイン、大きさなど生産される地域によって違う。キムチの種類や食べる時期によって、保管する容器も違ってくる。「ドックー」と言われる大きな甕や、「ダンジー」と呼ばれる小さな甕い入れて保管したり発酵させたりするものなどもある。屋外の使用に際し雨風をしのげるように、蓋のついたユニークな形になっているのも特徴的だ。

 大体2〜7度の状態で2、3週間熟成させたキムチが最も美味しく、栄養価地も一番高い。美味しく食べるには、何よりも保管が大事だという。適した冷蔵温度は0度。そうすれば3ヶ月位は保存が可能だという。

 保管期間が経って酸味がひどく、そのまま食べれなくなったものも、料理次第で食べることができる。酸っぱいキムチと豚肉を入れて沸かしたキムチチゲ。酸っぱいキムチを水で洗い小麦粉と練って、フライパンで焼くキムチチヂミ。白菜とキムチと豆腐、豚肉などを細かく刻んで作るキムチギョーザといったものだ。

 キムチを学んだ私に課せられた次の課題は、カルビを食べることだった。そこには何の因果関係もない。カルビも食べなければ韓国は語れないのだ。
 宿の近くの店に行くと最低二品注文しろと店員に言われてので、カルビとビールを注文した。満腹になって会計をすると、計算よりかなり料金が高い。その事を問い詰めると、だってあんたはカルビを2人前頼んだじゃないかと言われた。

 注文は最低二品と受け取っていたのは、カルビは最低2人前からということだったのだ。どおりで量がやたらと多かった訳だ。
 後に知ったのだが、それは韓国では一般的な事だという。知らなかった私は店員に文句を言い、キムチの国なのに気持ちよくなく店を去ったのだった。




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