声明を聞きに京都郊外へ (京都) |
2009年1月4日 |
今回の旅のメインは、仏教歌である声明を聞くことだった。それが聞けたのは、京都の郊外にある声明発祥の地という勝林院。
声明を披露してくれるのは周辺寺院の住職達。といってもこれはイベントではなく、実際はその年の平和を祈念する厳粛な法要。その中で声明が聞けたのだ。
勝林院は大原三千院の隣。盆地である京都の冬は寒いと有名なように、三千院の周辺には所々に雪が残っていた。
声明ライブとも言える法要の開演は15時半。多くの客が来るかもしれないと早くから本堂に入っていたが、集まったのは僅か10人程だった。
法衣を着た坊さんたちも次第に集まってきた。その数も見学者と同じく10人程。見学者は寺の中の片隅に座っていたのだが、とにかく寒い。反対の隅に坊さんたちが集まっていたのだが、そこにはストーブが用意されていた。
坊さんの中でも若い僧が年配僧の前にストーブを持って行くと、何やら私たちの方を指差していた。さすが坊さんである。そのストーブを自分は使わず、見学者である私たちの近くに置いてくれた。
寺の中央には大きな仏像が祭られていた。その向かいに一番偉いと思われる坊さんが座ると、待っていた声明ライブが始まった。
想像していた通り声明は一般的にイメージするお経とは違い、部分的に節やメロディーを伴っていた。しかも、最初はメインの坊さんが独唱していたものが、時には全員で唱えて盛り上がったり、輪唱になる部分などもあったりと、音楽的にも聞き応えがあった。
坊さんといえども人間らしく可笑しかったのが、節や経を間違えたりすることがあったことだ。全員経典を見ながら歌っているのだが、その経の節が明らかに疑問系の音になり、ここでいいのかと経典をめくったりする一コマもあった。
声明が次第に盛り上がってくると坊さんたちは立ち上がり、並んで仏像の周りを歩き始めた。歩きながら時折、赤、青、緑、黄、白などの色のついた枯葉のような形をした紙を、頭上に放り投げたりもしていた。
途中で村の若者たちが加わって「三十三度」という蛇おどりも行われた。最後には牛王宝印という、お札が付いた30cm程の木の棒が見学者全員に配られた。
1時間半のライブ(本当は法要)は飽きることなく、十二分に楽しめるものだった。料金は寺の入場料300円だけなので、こんなライブは見ない方が損である。
古くからある声明というお経の音楽。現在も歌い継がれていることは素晴らしいことだし、それを発祥の地であるこの勝林院で、それも生で聞けたのは貴重な体験だった。