静かじゃない芸術の村 (ウブド) 2007年4月23日〜27日


 ウブドはバリ島の山間部に位置し、芸術の村として知られる。伝統的なバリ絵画が特に有名で、プリ・ルキサン美術館やアルマ美術館などのギャラリーがあり、木彫り細工店や彫刻店、絵画店なども多くある。

 町の中心部のウブド王宮はホテルとして開放されており、毎晩ガムランの演奏で演じられるバリ舞踊が行われている。王宮だけでなく、毎日どこかしらでバリ舞踏が開催されているので、町を歩いているだけでガムランの音が聞こえてくる。

 町はずれには見事なライステラスが広がり、谷間を流れるアユン川の渓谷美も楽しめる。観光客もそれなりに多くいるが、このウブドはクタなどのリゾート地とは大きく異なり、町にもバリの文化が溢れている。
 ゆっくり過ごすのにぴったりの場所。この土地から多くの芸術が生まれていったのも分かるような気がする。

 ウブドはいろいろな村が集まった集合体。近隣の村にも散歩がてら行ってみた。どこの村でも人々は気さくで、すれ違う度に声を掛けてくる。
 バリの人々は外人に対して排他的な所がまったくない。まるで自分の国をのんびり散歩している錯覚に陥るくらいに居心地がいい。これもバリの人々が持つ懐の深さがもたらす所以だろう。

 バリのヒンドゥー教はインドとは大きく異なるようだ。インドではどこに行っても神様のポスターやステッカーなどを見かけたが、ここではそれを見る事がない。
 バリのヒンドゥー教では、朝、昼、晩と毎日3回、花のお供え物を家の前や寺の像などにあげて祈るという。

 そのようにして祈る姿を何度も目にしたが、そこには宗教的な重いイメージはなく、宗教と生活が程よいバランスで調和されているように思えた。
 バリのヒンドゥー教はインド伝来のヒンドゥー教と地元に古くからある祖先崇拝、精霊信仰などが合体した、独自の宗教であるようだ。

 ある夜にダラム・ウブド寺院でジェゴクの演奏があった。ジェゴクとは竹のガムランであり、音階順に並べられた大小の竹筒を叩いて音を奏でる打楽器的なアンサンブル。このジェゴグの本場はバリ島の西にあるヌガラという町だという。

 ジェゴグが行われる寺院は密閉された建物じゃないので、外にいれば漏れてくる音楽を聞けるはず。その予想通りに外で音楽を聞く事は出来たが、寺院の前を通る車やバイクの音が時折うるさく、静かに音楽を満喫するまでは出来なかった。

 泊まっていた宿は中心地から離れた場所だった。この宿を選んだ理由は、近くに作家のロバート・ハリスが経営するカフェ「エグザイルス」があったからだ。彼が作ったカフェがどんなものか見たかったのだが、数年前に潰れてしまったらしく店はもうなかった。

 宿の周りはライステラスがある静かな田んぼ。夜は虫の鳴き声を聞きながら眠れるだろうと思っていたが、これがそうではなかった。
 毎晩夜0時から3時まで、近くのクラブから鳴り止まないトランス・ミュージックが漏れてくるのだ。宿替えするのも面倒だったので、その音楽を子守唄にして毎晩眠りに付いたウブドでの数日であった。




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