遺跡にいたモデル (ジャンスィー) |
2003年1月27日〜30日 |
カジュラホからジャンスィーへと向かったバスは、途中のバス・ターミナルで長いこと停車。その時、外で乗車を待っている客が大勢いたのだが、中にいた乗客のオヤジが扉を開けさせないようにして何やら随分揉めていた。
私は中にいるので理由が何だったのかは分からない。しばらくすると扉が開かれて客が一斉に乗り込み、あっという間に満車になった。滞在数日のインドだが、このような理解不能な風景をしばしば目にしている。
隣に座った若い男に声を掛けられたので話をしてると、銀色の包みの小さな袋を開けて何か食べていた。それは何だと聞いてみると、同じ物を一袋くれた。
食べてみろと言うので袋を開けると、中にはナッツを砕いたようなものが入っていて、きつい匂いが鼻を突いた。口に入れて噛んでみたが、これがえらくまずかった。
その味以上に変だったのは、この若者の容姿だ。こいつは爪に赤いマニキュアを塗って腕時計を内側にはめ、おまけにハンカチを手にしている。その容姿はどう考えても「私はオカマです」とアピールしてるとしか思えなかった。
扉を開けさせないようにしていたオヤジといいこのオカマといい、人口が世界第2位の国では、あちこちで変わった人間が現れる。
目的地のジャンスィーには1泊の予定。宿は駅のリタイアリングルームを利用しようとしたが、鉄道のチケットがないと泊まれないと断られた。仕方ないので近場の宿をあたり、100ルピーの安宿にチェックイン。
荷物を置いて周辺を散策すると、テーブルと椅子だけの簡易なバーがあり、仕事を終えた労働者たちで賑わっていた。
酒を買って帰ることも出来たのでラム酒を注文したのだが、バーテンに門前払いをされ売ってくれない。地元の客は普通に買ってるので、近くで飲んでいたオッサンに酒は買えないのかと聞いてみた。
何やら説明されたが言葉が分からないので諦めようとすると、オッサンが金を出せと言ってきた。渡すと「ちょっと待ってろ」と他の男に声を掛け、その男が代わりに酒を買ってオッサンをリレーして渡された。
酒は買えたのだが、最初に買えなかった理由や、密売のような受け渡し方が何だったのかはさっぱり不明だった。
路上ではボロ布で作ったテント暮らしの人々が多くいて、宿近くの施設ではバナナ一本の配給を受ける行列が出来ていた。旅を始めてから物乞いは既に見ていたが、ここで初めてインドの貧しさを感じた気がする。
日帰りでオルチャという町も訪れてみた。ここは16〜17世紀に栄えたブンデラ王国の都で、当時の宮殿や寺院、城などの遺跡群が点在している。
一番大きな遺跡のジャハギーマハルは、中が迷路のようになっていた。暗くて怪しげな階段を昇っていくと、突然景色の良い高台に出たり、階段があるのにその先は行き止まりになったりと、建物内をうろつくだけでもて面白かった。
別の遺跡のラジャマハルに行くと、小さな弟を抱えた子供がいた。写真を撮ってもいいよと言うのでポーズを決めた2人の写真を撮ると、なんとモデル料を要求してきた。
毎回こうやって観光客を待ち構えてるのだだろう。最初から素直に言えば少しは払う気にもなれたが、これじゃ金をやる気にはなれない。
こういう子供や路上の貧しい人々を興味の目線で見ていたが、実は小奇麗な服を着て歩いている自分の方が、モデルのように注目されてるのではないか。宿へと戻るバスの中でそんな事を感じた。