匂いの宝庫 (デンパサール) 2007年4月27日


 ウブドでバイクをレンタルした若者の親父に、車でデンパサールまで連れて行ってもらう事にしていた。何度も確認した料金は1万4千ルピア。約束通り朝9時に親父は宿に迎えに来た。

 やけに料金が安いのが気になっていたので、出発する前に再度確認すると、親父は予想通りに料金を14万ルピアと勘違いしていた。
 それじゃバカ高いのでこれは断り、結局べモ(ローカルのミニバス)を乗り継いでデンパサールのトゥガル・べモ・ステーションまで行った。

 バリの国際空港は、てっきりこのデンパサールにあるものだと思っていた。そのためにこの地を旅の最終地点にしていたのだが、よく調べたところ、空港はクタ・ビーチの南に位置していた。
 だが、デンパサールからクタまでは遠くはないので、移動に時間はかからない。いずれにせよ、べモ・ステーションの近くに宿を見つけたので、空港までの移動は安易だった。

 デンパサールの町の中心にはププタン広場ある。昼間はほとんど人がいなく静かだったが、夕方からは市民の憩いの場に変わり、サッカーをする少年たち、くつろぐ家族やカップルなどで賑わっていた。
 たまたま子供たちによる伝統舞踊の発表会が行なわれていた。着飾った子供を撮影する親たちの姿は、どこの国でも同じだなと感じた。

 宿の近くにウィサタ21という映画館があり、上映が都合よく始まる映画があったので見ることにした料金は1万ルピア。館内はエアコンがかなり効いており、座席も柔らかく座り心地が快適だった。

 映画は「NAGABONAR JADI 2」というもので、内容は親子が繰り広げるヒューマン・コメディといったもの。親父役の顔は稲川淳二に似ており、息子役のは川崎麻世に似ていた。
 もちろん言葉は分からないので眺めていただけだが、観客から何度も爆笑が起こっていた様子からすると、かなり笑える内容の映画だったのだろう。

 帰りのフライトにはリコンファームが必要だったので、航空会社に電話した。すると、スケジュールが変更したので、出発が予定より7時間ほど遅れると言われた。
 私の格安航空券は、台湾の台北を経由して日本に帰るもの。行きは台北に滞在したので問題はなかったのだが、帰りは一度台北の空港を出て宿泊し、翌日また別の便に乗る必要があった。

 これが面倒だったのでフライトが遅れた事を理由にして、台北からの便をもっと早い時間に変えてくれと頼んでみた。
 通常格安航空券は予約の変更が出来ないのだが、すんなりとフライトの変更ができた。おかげで台北では4時間待つだけで、空港の外にも出る必要がなくなった。

 デンパサールはバリ州の州都。地名が「北(デン)の市場(パサール)」という意味だけに、町のあちこちに市場がある。特に活気があるのが、パサール・バドゥンとクンバサリ・ショッピングセンターという大きな市場。2つの市場はバトゥン川を挟んで対峙している。

 パサール・バドゥンには、生鮮食料品、香辛料、日用品などが隙間なく積み上げられている。クンバサリ・ショッピングセンターは、主に雑貨店などが入った大衆的なショッピングセンター。この市場の周りにも多くの店があるが、とりわけ布を扱う店が多く目に付いた。

 この市場の周辺を歩いていると、魚や野菜、果実、肉、香辛料、お香などの匂いが渾然一体となって鼻を突く。どれもが存在を誇示するかのように、強烈な匂いを発している。狭い道の中には車やバイクが行き交い、頭の上に竹篭を乗せた女たちが往来する。

 市場の近くにはモスクがあったので、ジャワ島以来、久し振りにアザーンを聞いた。匂いの宝庫であるデンパサールの市場には、観光地としてのバリではなく、生活に密着した庶民のバリがあった。


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